チタンという金属をご存知ですか?
PIGMENT TOKYOにある基底材には、紙やキャンバスなどのように一般的に使われているものだけでなく、金属である「チタン」素材もあるのです。
日本製鉄株式会社が開発した意匠性チタン、TranTixxii®(トランティクシー)。チタンに“美しさ”を追求する”という、世界でも類例のないブランドを展開しています。
こちらの記事で、TranTixxii®開発秘話について特集しております。
【ARTICLES】TranTixxii®開発秘話インタビュー
チタンは一体どのような金属で、画材として使用した時にどういった効果を得られるのか、ご紹介いたします。
【チタンの特徴】
・鉄やアルミニウムよりも強度がある。
・不燃性が高い。
・耐食性が高い、半永久的に錆びない。
・外装などに用いられるほど酸性雨でも変色しにくく、紫外線や海水への耐性も高い。
【TranTixxii®の特徴】
■豊富なカラーバリエーション
・TranTixxiiの独自技術によってチタン表面の酸化被膜を自在にコントロールし、豊富なカラーバリーエーションがある。
■干渉色
・色調豊かな干渉色が現れる。
・見る角度や天候、時間、光の移ろいによって変化する。
■軽い
・作品の基底材としての使用可能な重量。
■耐食性が高い
・錆や腐食に強いので、長期保管も可能。
当ラボでご用意している種類とサイズはこちらです。(※2021年5月6日現在)
■種類
・ND20 (各23色):表面に凹凸がありマットな質感
・SD3(各23色):光沢があり鏡面仕上げ
■サイズ
・サンプルサイズ:100mm×100mm
・パネルサイズ(パネル貼付):F6 、F10、F15、F25
詳細につきましては、下記商品ページにてご確認ください。
また、店頭にサンプルもございます。ご不明点等ございましたらスタッフにお声かけください。
色彩豊かなカラーバリエーションも塗装ではありません。
チタンの表面に薄い酸化皮膜(無色透明)を生成させると光を干渉して色が見え、この膜厚を変えることによって、醸し出した表面仕上げです。
チタンのメリットを生かしつつ、より多様性のある金属製品として開発されたTranTixxii®は、特徴を見ただけでも「良い素材」ということがわかります。しかし、やはり実際に使った時にどのように使えるのか、気になるところです。
4種の色材で試していきたいと思います。
■チタンパネル×エフェクト顔料
単色でもきれいなエフェクト顔料ですが、カラーチタンパネルに塗るとどのような光輝性が現れるのでしょうか。
こちらは落ち着いた色彩で偏光するデュオクロム。
【使用画材】
■画像 左
色材:デュオクロム RB
メディウム:アクリルエマルション
基底材:カラーチタンパネル ND20(#8)
■画像 右
色材:デュオクロム RB/クサカベ セルリアンブルー
メディウム:アクリルエマルション
基底材:カラーチタンパネル ND20(#76)
デュオクロムはマイカに酸化チタンや酸化鉄が被覆したパール顔料。偏光作用があるエフェクト顔料です。RBは白地に塗布するとピンク、黒地では青みのある輝きを放ちます。
チタンパネルが#76(青系)よりも#8(ゴールド系)の方が少し赤みが強いピンクのパールカラーが現れました。
双方とも上から、下記のように絵具を塗布しております。
・水分多め
・濃いめの絵具(多め)
・濃いめ絵具(少なめ)
また、右の#76には、クサカベのセルリアンブルーを重ね塗りしました。画像では少しわかりにくいのですが、うっすらとデュオクロム RBも見えるので、塗り方を調整して地と図の効果をうまく利用できそうです。
チタンパネル自体の色や偏光作用と、絵具の量やパネルの凹凸による違いなどを生かした表現の可能性を感じます。
次はゴールドとオレンジ系の情熱的な雰囲気のカラーが特徴のメオキサルを、光沢のある鏡面のSD3に塗布しました。
使用したチタンパネルは、鏡面仕上げのSD3、#0(シルバー)。#0は酸化皮膜を付けていないので、干渉作用はありません。下の画像はどちらも同じものですが、見る角度による色の見え方の違いを比較しました。
【使用画材】
色材:メオキサル F120-51 Victoria Red/デュオクロム RB
メディウム:アクリルエマルション
基底材:カラーチタンパネル SD3(#0)
メオキサルは、高純度のフレーク状アルミナを基材にしたペースト状の光輝性顔料。偏光作用はありません。偏光の有無を見るためにデュオクロム RBも塗布しました。
左は上から光が当たり、右は少し角度をつけて撮影しております。
このパネルは周囲の色や光が映り込みやすいので、より環境の違いによる影響を受けやくなるためか、ND20よりデュオクロムの変化がわかりやすいように感じます。角度をつけた方が、より赤みが強いピンクになりました。
SD 3とND20で絵具の定着の仕方も異なりますので、メディウムや絵具濃度の調整、重ね塗りの有無など、表現に合わせた試作をしてみてください。
チタンパネルはアクリル絵具でも定着しますが、種類により少し剥がれやすくなる場合もあります。定着力を強めたい方は、プライマーの使用をおすすめします。
■チタンパネル×墨
【使用画材】
色材:大和雅墨 茜雲
基底材:カラーチタンパネル ND20(#0)
水分の多い墨は弾きやすいので、凹凸のあるND20に塗布しました。
薄い色の部分は1回塗り、中央付近の濃い部分は3~4回重ね塗りをしております。数回塗ると色は付きますが、鋭利なもので軽く擦ると傷が付きます。
展示や長期保管には工夫が必要ですが、その性質を利用した表現や加工ができそうです。
■チタンパネル×油性アルキド樹脂絵具 Pebeo
【使用画材】
■画像 左
色材:油性アルキド樹脂絵具 Pebeo
プリズム パールバイオライン No,25/プリズム バーミリオン No,12
基底材:カラーチタンパネル ND20(#58)
■画像 右
色材:油性アルキド樹脂絵具 Pebeo
プリズム パールバイオライン No,25/プリズム バーミリオン No,12
ヴィトラーユ スカイブルー No,36
基底材:カラーチタンパネル ND20(#88)
【使用画材】
色材:油性アルキド樹脂絵具 Pebeo
プリズム バーミリオン No,12
基底材:カラーチタンパネル SD3(#48)
色材としての個性も強い油性アルキド樹脂絵具Pebeo。
キャンバス、紙、ガラス、金属などに描くことができ、艶のある仕上がりが得られる油性の溶剤系絵具です。
ヴィトラーユは透明度が高く、単色でも美しい絵具です。
プリズムは不透明で、絵具が乾燥するにつれて「ハチの巣」模様のような効果が現れます。どちらも艶があり、混色可能な色材です。
油性ですが光沢があり、塗膜のような仕上がりになります。
今回はあえてペンチングナイフを使ったり、ボトルからそのまま流し込んで塗布したので色面はかなり厚みがありましたが、ND20とSD3のどちらも表面は約半日ほどで乾きました。
塗布したパネルを重ねて移動しましたが、剥落などもせず、しっかりと定着しました。
ご紹介した組み合わせはほんの一例ですが、新たな発見のヒントにお役立てください。
基底材として表現の幅を広げる大きな可能性のあるカラーチタンパネル。みなさまの感性のスパイスとして、いかがでしょうか。
■意匠チタンTranTixxii®(トランティクシー)