—展色剤とは何ですか。
色の粉である顔料は、単体で紙やキャンバスに塗ることはできません。「展色剤」と呼ばれるのり剤と混ぜることで、はじめて絵具として使用することができます。私たちが学校教材などで見慣れているチューブ絵具は、基本的に顔料と展色剤を混ぜ合わせて作られています。また、「メディウム」と表記されることもあります。
—膠(にかわ)について教えてください。
牛や豚、魚などの動物の骨や皮を煮て抽出されたゼラチン質の展色剤です。東洋では、岩絵具などの顔料や箔の接着剤、紙のにじみ止めとして、西洋では楽器の製作や絵画の下地づくりにも使われています。
固形のものは水で溶解させて使用します。用途によって膠の種類や、使用する濃度が異なります。
—メディウムとは何ですか。
メディウムとは「媒体」という意味を持ちます。
顔料を基底材(紙やキャンバスなど)に定着させるための「展色剤(のり剤)」のみを指す場合と、さまざまな表現に使う素材を総称してメディウムと呼ぶ場合があります。
のり剤としての役割の他に、絵具と混ぜてツヤのある質感や、盛り上がった筆のタッチを作り出すもの、絵具が乾く速度をコントロールするものなど、多種多様な特性を持つメディウムがあります。
—展色剤の使い方を知りたいです。
顔料と展色剤(のり剤)を混ぜることで、「絵具」になります。みなさまが見慣れているチューブ絵具は、顔料と展色剤などを混ぜて作られたものです。
PIGMENT TOKYOでは主に、日本画用の「岩絵具」、水彩絵具やアクリル絵具、油絵具などで用いられる「ピグメント」、光輝性のある「エフェクト顔料」の、大きく分けて3種類の顔料を取り扱っています。
顔料や絵具の作り方については、下記の関連記事をご参照ください。
【関連記事】PIGMENT ARTICLE
画材のいろはー顔料の基本ー Q.顔料にはどのような種類がありますか。
絵具のつくり方
—絵具をつくるとき、展色剤はどのように選べば良いでしょうか。
水彩絵具、アクリル絵具、油絵具、日本画の絵具など、作りたい絵具の種類にあわせて展色剤を選びます。それぞれの展色剤の特性は、下の表や関連記事をご参照ください。
また、顔料や基底材の種類、表現技法により使う展色剤が変わることもあります。
絵画技法 |
性質 |
主な展色剤の種類 |
---|---|---|
水彩画 |
非耐水・水性 |
|
アクリル画 |
耐水・水性 |
|
油彩画 |
耐水・油系 |
オイルカラーメディウム/画溶液(オイル) |
日本画 |
半耐水・水性 |
【関連記事】PIGMENT ARTICLE
顔料+メディウム=絵具?
—それぞれの展色剤の特徴を教えてください。
絵具づくりがはじめての方にも扱いやすい基本的な展色剤(のり剤)と、その特徴をご紹介いたします。
ガムアラビック(アラビアゴム)
・固形化した後も水に濡れると再びとける。
・固着力が弱い。
アクリルエマルション/アクリル系メディウム
・乾燥すると皮膜化し、耐水性が備わる。
・固着力が強い。
オイルカラーメディウム/画溶液(オイル)
・水に溶けないため専用の画溶液(オイル等)で薄めて使う。
・ツヤのある強い塗膜を作ることができる。
・ゆっくり乾燥する。
膠(にかわ)
・顔料の色や質感を生かした、絵具の塗り重ねに向いている。
・柔軟性が高く固着力が強い。
・水との親和性がよく、温度により固体、ゲル化、液体に変化する。
—異なる種類の展色剤を混ぜて使うことはできますか。
基本的には、展色剤の定着力や基底材の収縮率を揃えた方が絵画の保存性が高くなるので、一つの画面上では同じ展色剤を使うことをおすすめします。ただし、定着力の強弱の調整を兼ねて水性同士、油系同士の展色材を混ぜて使用することは可能です。
水性と油系の展色剤を合わせて使う際には、水性の下地の上から油絵具で描くことは可能ですが、油絵具の上に水性メディウムの絵具で描くことはできません。
顔料や基底材の種類など条件によって変わってくるので、作品に使用する場合はテストしてからご使用ください。