私たちが色を目で見て感じることができるのは、光の作用によるものです。モチーフや顔料に吸収しきれなかった波長の光が反射、透過することで、初めて私たちは色を認識することができます。つまり実は私たちが色を感じる仕組みは、科学的な現象と切っても切り離せない関係があります。
また絵具が乾くことで様々な特性を産んだり、エフェクト顔料がキラキラと輝いて見えるのも、化学的な反応と非常に関係があります。今回の記事は、小学生の自由研究にもぴったりな、知的好奇心を刺激する画材も多数用意しています。ぜひPIGMENT TOKYOの画材を使って、自由研究の題材を考えてみましょう。
①色の仕組みを知ろう
色は三原色と呼ばれる青(シアン)、赤(マゼンタ)、黄(イエロー)で構成されています。
私たちが目で見える基本的な色は、この3つの色を混ぜることで表現することができます。
三原色を基準とした12色を円環状に配置したものを「カラーホイール」と呼び、色の組み合わせの参考になります。
下の図をご覧ください。例えば赤系と青系の色を混ぜることで、紫色を作ることができます。
Photo AC「カラーホイール」
この図で対の位置にする色は「補色」と呼ばれ、色が持っている性質が大きく異なるため、このふたつを組み合わせることで互いを引き立てる効果を持っています。
企業のロゴや広告などは、この組み合わせを用いるケースが多いです。
また、この補色同士を混ぜることで無彩色、つまり黒やグレーとなります。これは互いの色が混ざることで色同士が吸収しあうことで起きる現象です。
こうした色の実験におすすめなのが、AQYLA(アキーラ)です。
この絵具は鉛や水銀、カドミウムを含まず、ホルムアルデヒドが少ないので環境にもやさしい水溶性のチューブ絵具です。これを使えば、お子様も簡単に色で実験をすることができます。表面だけアクリル絵具のようにすぐ固まることがないので、お掃除も簡単です。
また、AQYLAは様々な支持体に描くこともできます。紙やキャンバスはもちろん、金属、ガラスにも直接描け、完全乾燥すると耐水性になるので、工作にも便利です。
色相環の図を元に、混色のパターンを図式化したものがこちらです。
例えば赤と黄色を混ぜるとオレンジ、黄色と青で緑になるなど、組み合わせは多様です。色同士を混ぜることでどんな変化が起きるのか、全部混ぜた時の色と、黒はどのような差があるのか、実験感覚で試してみると、新しい発見があるかもしれません。
DESIGNER / ILLUSTRATOR HIROTA「【色の三原色】Three primary colors」
②絵具の材料を学び、作ってみよう
色の仕組みはすでに学校で習ったという方には、実際に絵具を作ってみるのも良いかもしれません。「絵具を作る」となるとハードルを高く感じてしまう方もいるかもしれませんが、絵具は顔料とメディウムの組み合わせで作られていて、例えばこの画材を組み合わせることで簡単に絵具を作ることができます。
顔料ペーストとは、顔料と水を練り合わせた液体の色材です。ただ、これだけでは接着力がないため、糊剤となるメディウムを添加することで絵具となります。
この「ガムアラビック 水彩メディウム」を混ぜることで、水彩絵具をつくることができアクリル絵具を作りたい場合は「アクリルエマルション」を使えばアクリル絵具になります。
PIGMENT TOKYOの画材エキスパートに絵具作りを学びたいという方には、当ラボの「水彩絵具づくり」ワークショップがおすすめです。この講座では西洋の古典的な製法にならい、大理石板と練り棒を使用したハンドメイドに挑戦できる、ビギナー向けのワークショップです。
PIGMENT ARTICLES「ワークショップ [入門]水彩絵具づくり」
講師から絵具の材料について学んだのち、ご用意した顔料の中から好きな色を選び、自分だけの絵具を作る体験できます。
PIGMENT TOKYO 「WORKSHOP」
③色が何からできているかを知ろう
PIGMENT TOKYOには4500色に及ぶ顔料がありますが、その半分以上は岩絵具です。これらは鉱石やガラスを粉末状にしたもので、粒子感が美しく、ザラザラとした物質性も魅力的です。
当ラボの店頭では天然の岩絵具の原料となる鉱石の展示をしていますが、もっと歴史が深いのがこの群青と緑青です。群青の原材料は「藍銅鉱(らんどうこう)」と呼ばれる石の一種で、銅の二次鉱物です。また、緑青の原材料は「孔雀石(くじゃくいし)」と呼ばれ、こちらも同じく銅の二次鉱物です。
日本人にとって馴染み深い10円玉も錆びると緑色を帯びることがありますが、これも緑青同様に原料の銅が水分や酸や塩分などに触れ、酸化することによって生成されます。つまり、私たちの身近なところにも、日本画の色と同じ成分の「色」が隠れているのです。
また、色材はこれ以外にも様々な原料から作られています。
水干絵具は貝殻を砕いた胡粉をペーストにし、それに色をつけて乾燥させた色材です。フレーク状になっており、そのまま混ぜることはできないので、乳鉢と乳棒で粉末状にしてから使用します。
水干絵具と形状が似ている土絵具は、古来より使用されてきた天然の顔料です。古くから残っている古墳や洞窟の壁画でも、これらが用いられてきました。とりわけ緑土は英語で「テールベルト」と呼ばれ、ヨーロッパでも多用されてきた歴史のある色です。
さまざまな原料の色材を観察し、塗り比べをすることで、どのような差があるのかを観察してみましょう。また、日本は四季に応じてさまざまな色がモチーフと関連づけて語られています。近所の美術館・博物館に行って、そこに収蔵された名品に使われている色に注目してみるのも良いでしょう。
④墨の色の違いを観察してみよう
一般的に習字の授業で用いられる墨汁は、書画作品で使われていた墨と見た目こそ似ていますが、厳密にいうと全く別ものです。
墨は植物などの油や木材を燃やして採取したの煤(すす)と膠(にかわ)からできた固形墨が基本形です。ただ、この状態から液体の墨にするには硯と水で磨る必要があるので時間がかかります。、そのため、膠の代わりに合成糊などを添加した液体の墨がいわゆる墨汁と呼ばれる商品です。便利さはあるものの、墨本来の発色を得ることはできません。
PIGMENT ARTICLES「墨を磨る 〜煤と膠が織りなす五彩の美〜」
固形墨を硯で液状にする動作のことを、漢字で磨(す)ると書きます。擦(こす)るのではなく、磨くという字が当てられているのは、その動きにも由来します。硯の平らな面の上で墨を優しく、まるで硯をすりおろすようなイメージを持って作業を進めると、墨や硯を痛めることなく、綺麗な墨を作り出すことができます。
固形墨を硯で磨った墨液と墨汁の違いが1番わかるのは、吸水性の高い紙に描いた時です。
当ラボでは、墨を使う場合はこの和紙をおすすめしております。
この紙はにじみ止めを施していなく、吸収の良さと表面の表情を重視した、水墨画のにじみ表現に適した、竹を主原料にした和紙です。特に水で薄めた時の煤による絶妙な発色は、墨汁で表現することが難しい豊かな階調を作ることができます。
厚手のため、半紙のように折れ曲がったりすることがないので、容易に保管が可能です。
固形墨による墨液と墨汁はグレーの階調を作ったときが1番差がわかりやすくなるので、普段授業で使っているものとどのような違いがあるのか、見比べてみると面白いでしょう。
墨を磨る詳細なプロセスは上記のPIGMENT ARTICLES「墨を磨る 〜煤と膠が織りなす五彩の美〜」で記載しておりますので、こちらをご覧ください。
固形墨と硯、どちらもお持ちでないという場合には、気軽に始められる彩墨もおすすめです。これは顔料と膠を固形墨のように固めたもので、専用の陶器製の硯を使って磨ると、日本の伝統色が再現された墨液で描くことができます。
詳細はこちらのリンクをご覧ください。
PIGMENT ARTICLES「彩墨で東洋の美を楽しもう」
他にもエフェクト顔料の発色の仕組みや、メディウムごとの質感や性質の違い、天然由来の色を探してみるなど、画材にもさまざまな可能性があります。
自由研究のテーマ選びでお困りの際は、ぜひPIGMENT TOKYOにお越しください。