道具や画材について深く知ることは、作品づくりの視野を広げ、創造のヒントにもつながります。
2025年の夏、PIGMENT TOKYOでは「筆」「絵絹」「墨流し」にフォーカスした、子どもから大人まで楽しめる3つのワークショップを開催いたします。
筆メーカーの老舗・京都中里を迎えた筆作り体験、絵絹ならではの描画技法、偶発性を楽しむ墨流しと砂子による表現など、素材と向き合い、その特性を体感できるスペシャルプログラムです。
道具の成り立ちや日本で受け継がれた技法の魅力を再発見し、この夏は新たな表現の扉を開いてみてはいかがでしょうか。
① 京都の筆やさんが教える筆づくり体験
京都で長年筆づくりを手がける老舗、株式会社中里の代表取締役社長 中里文彦氏を講師に迎え、筆の魅力や構造について学びながら、伝統的な筆づくりの体験ができます。
筆を使うだけでなく「知る」「つくる」ことを通して、制作の原点に立ち返ってみませんか。
座学と実技の両面から筆について学べ、日本の筆文化に興味がある方にもおすすめの内容です。
講座概要
[特別講座]京都中里 筆を知る / 筆をつくる
開催日程:2025年7月26日(土)
時間:13:00 – 16:00
場所:PIGMENT TOKYO
講師:株式会社中里 代表取締役社長 中里文彦
受講料:¥9,900(税込・材料費込)
対象年齢:推奨5歳以上(幅広い年代の方にご参加いただいております)
ご予約開始日時:2025年6月1日(日) 12:00より予約ページ公開
ご予約:7月26日(土)[特講]京都中里 筆を知る / 筆をつくる 25/07/26
■保護者同席(1名様):無料
※保護者同伴の場合は、オプション(無料)を併せてお申し込みください。
※受講1名様に対し、ご同席は1名様までとなります。
※数に限りがございますので、規定数に達し次第、締め切らせていただきます。
※材料は含まれません(制作のお手伝いは可能です)。
※細かい作業が伴うため、小学校低学年以下は保護者の補助が必要です。
◾️筆づくり体験
講義で筆の要ともいえる獣毛の原材料や特性を学んだ後、2本(大・小 各1本)の彩色筆を作ります。
軸に糸を巻きつける練習風景
筆を大きく分けると、毛を束ねた「穂」と、持ち手となる「軸」という二つの要素で構成されています。
実技では、熟練の職人が長年の経験で選りすぐった毛で仕立てた穂に、糸を巻いて固定する「糸締め」と呼ばれる工程を中心に筆づくりを行います。
糸締めとは、穂がほぐれたり崩れたりしないように、穂首に糸をしっかりと巻きつけて固定する重要な作業です。
この作業にはコツがいるため、最初は穂首の代わりに軸に糸を巻きつけて練習することから始めます。手や指、さらには口も使いながら、完成した穂首と加工された軸を組んでいくと、彩色筆のできあがりです。
画像左:糸締め作業/右:完成した彩色筆
完成した彩色筆はお持ち帰りいただけます。ぜひご自宅でもお使いください。
また、筆の構造や特性を学んだ上で、実際に絵具を使って多彩なバリエーションの筆を試すことができます。
筆には、イタチや山羊(ヤギ)をはじめ、狸、鹿など、さまざまな動物の毛が使われ、職人の手で調合されています。毛の種類だけでなく、産地や部位、筆の製法や形状によって異なる絵具のふくみ方や筆致をぜひその手で感じてみてください。
中里 商品一覧
こちらの記事では、筆の特色を毛の素材ごとにわかりやすくご紹介しております。
ワークショップに参加される前の予習や、講師へのご質問を考える際の参考資料としてもご活用ください。
株式会社中里 代表取締役社長 中里文彦氏
中里は、時代や環境の変化に対応しながら試行錯誤を重ね、現代でも質の高い筆づくりを追求し続けています。長年にわたり職人や画家とともに歩んできたものづくりの精神に触れることで、道具への理解が深まり、創作や画材との向き合い方にも変化が生まれるかもしれません。
株式会社中里
https://www.kyoto-nakasato.com/
② 彩色を通して出会う伝統素材「絵絹」の魅力
「絵絹(えぎぬ)」は、美しい透け感と光沢のある質感が魅力ですが、デリケートな素材ゆえ、紙とは異なる特別な準備と技術が求められます。
水干絵具を用いた「絹本彩色(けんぽんさいしき)」の技法を通じて、絵絹ならではの品やかな筆触や発色の美しさを実感できる内容です。
初めての方にもわかりやすくレクチャーしますので、絵絹や日本絵画技法に興味のある初心者の方も安心してご参加ください。
講座概要
[入門]絵絹に果物をえがく(のぶどう)
開催日程:2025年8月11日(月・祝)、8月17日(日)
時間:14:00 – 16:00
場所:PIGMENT TOKYO
受講料:1名 ¥9,900(税込・材料費込)
対象年齢:推奨中学生以上
ご予約開始日時:2025年7月1日(火) 12:00より予約ページ公開
ご予約:
8月11日(月・祝) [入門]絵絹に果物をえがく(のぶどう) 25/08/11
8月17日(日) [入門]絵絹に果物をえがく(のぶどう) 25/08/17
※保護者同伴の場合は、オプション(無料)を併せてお申し込みください。
※受講1名様に対し、ご同席は1名様までとなります。
※数に限りがございますので、規定数に達し次第、締め切らせていただきます。
※材料は含まれません(制作のお手伝いは可能です)。
◾️下図を描く・裏彩色
絵絹に描く際は、水分による伸縮やゆがみを防ぐため、木枠に張り込みます。その後、にじみ止め(ドーサ溶液)を画面に塗布し、織り目や表面の張りを均等に整えます。
この工程を経て、ようやく絵が描ける状態になります。
なお、PIGMENT TOKYOでは水で希釈するだけでドーサ引きができる、オリジナルの豚膠溶液 20%を使用しています。
ワークショップでは、あらかじめにじみ止めまでを終えた絵絹に、下図(下描き)を転写するところからスタートします。 のぶどう(野葡萄)をモチーフにした転写用の下絵をご用意しておりますので、描き慣れていない方や、絵絹に初めて触れる方にも創作の魅力を感じていただけます。
画像左:下図の転写/右:裏彩色
下図を鉛筆でなぞり終えたら、半透明の絵絹ならではのアプローチで制作を進めていきます。
そのひとつが、絹の裏面から色を塗る「裏彩色」という技法です。
絹の裏面から不透明な白い胡粉を塗っておくことで、裏から色を差していない部分に比べ、仕上がりの際に表面から見た絵具の発色がより明るく、鮮やかになります。
◾️絵絹に彩色
裏彩色を終えたら、次はいよいよ表面からの彩色に入ります。ここでは練り合わせた牛膠溶液と水干絵具を用いて色を重ねていきます。
キメの細かい絵絹の質感を発揮した、鮮やかな発色や美しいグラデーションを生かしながら、のぶどうの色の移ろいとみずみずしさを表現していきます。
絵肌のなめらかな描き心地をはじめ、裏彩色による奥行きのある広がりや、絵具をぼかすことで生まれる柔らかな表情など、絵絹ならではの魅力を存分に味わうことができます。
絵絹を通じて新たな絵画表現の世界に触れてみませんか。
③ 偶然美と素材の響きあいを楽しむ 墨流し×砂子
水面に広がる墨の模様を紙に写しとる「墨流し」と、金や銀の箔を細かく散らして画面にきらめきを加える「砂子」。プロセスを体験しながら、素材が奏でる偶然の美しさや、響き合う一瞬の輝きを捉えながら、感覚的に作品を作ります。
「墨流し」は中国から伝わり、日本で独自に発展した技法で、昔は和紙や巻物などの装飾に使われてきました。今ではアートやインテリアにも取り入れられています。一方「砂子」は、金銀の箔を使った日本の伝統的な装飾技法で、屏風や漆器などに使われてきました。
水や風にゆだねるような制作スタイルは、完成形にとらわれない自由な表現が可能ですので、どなたでもお楽しみいただけます。
講座概要
[入門]墨流しと砂子で銀河を作る
開催日程:2025年8月24日(日)
時間:14:00 – 16:00
場所:PIGMENT TOKYO
受講料:1名 ¥9,900(税込・材料費込)
対象年齢:推奨5歳以上
ご予約開始日時:2025年7月1日(火) 12:00より予約ページ公開
ご予約:
8月24日(日) [入門]墨流しと砂子で銀河を作る 25/08/24
※保護者同伴の場合は、オプション(無料)を併せてお申し込みください。
※受講1名様に対し、ご同席は1名様までとなります。
※数に限りがございますので、規定数に達し次第、締め切らせていただきます。
※材料は含まれません(制作のお手伝いは可能です)。
※細かい作業が伴うため、小学校低学年以下は保護者の補助が必要です。
◾️墨流し
まずは墨を硯で磨りおろすところから始まります。
この工程では、指先の感覚だけでなく、音や香りを感じ、五感を研ぎ澄まして墨と向き合うことで、墨への理解を深めます。磨り方のポイントや、水の硬度(軟水・硬水)による発色の違いも比較し、墨の特性をより知ることができます。
墨と精油(テレピン)を筆で交互に水面へ落とすと、徐々に同心円状の縞模様が広がります。墨液が油分
と反発する性質を利用した現象は、静けさとともにどこか銀河の渦を思わせるダイナミズムをたたえます。良いかたちへ近づいてきたら、風景を拾い上げるように和紙や民芸紙に写しとっていきます。
※ワークショップで使用する硯は、PIGMENT TOKYOではお取り扱いがございません。
販売中の硯は、こちらよりご覧ください。
硯 商品一覧
墨流しと似た技法に「マーブリング」がありますが、こちらは水に浮かべた絵具を棒などで動かし、ある程度デザインをコントロールしながら模様を作っていくのが特徴です。それに対して、墨流しでは、水の流れそのものが墨の模様となって現れます。
ストローでそっと息を吹きかけたり、手であおいだり、水面を揺らすことで、偶然のかたちや表情に出会えるのも、この技法のおもしろさです。
◾️砂子 —箔を散らす
墨流しを終えた紙に、薄めた豚膠溶液を塗り、その上から専用の道具を使って金属箔を散らしていきます。
はるか彼方の星たちを手元に並べるイメージで、筒の網の目を抜けた細かな箔「砂子」がふわりふわりと次々に降り注ぐ様子を観察しましょう。素材同士が表情を引き立て合い、作品に一層深みが増していきます。
水や空気の揺らぎを活かした墨流しや砂子の技法は、制作過程のなかで思いもよらない表現が生まれるのも魅力的な要素ではないでしょうか。
また、純金箔や本銀箔、墨、硯など、少しハードルが高く感じてしまうような本物の画材に触れられるのもポイントです。
高品質な墨の滑らかな磨り心地や発色、純度の高い金・銀箔にしか出せない柔らかく重厚感のある輝きを、ぜひこの機会に味わってみてください。
PIGMENT TOKYOでは、お子様向けの特別企画や、通年開催しているワークショップもございます。ご興味がある方は、下記のリンク先にて詳細をご覧ください。
ワークショップ - PIGMENT TOKYO