季節の色を作る

季節の色を作る

日に日に陽射しが暖かくなり、新しい季節の訪れを感じると、私は東京の川沿いで見た満開の桜並木や、昔住んでいた奈良の咲き誇った八重桜の景色を思い出します。

花々が梅から桃、ソメイヨシノや八重桜と少しずつ変化していく春の景色を見ていると、私は「この自然の色は絵具の場合どうやって表現できるのだろう?」と思いを巡らせることがあります。

組み合わせる色、配合、濃淡、絵具や色材の違いなど、同じ色でも調色の仕方は何通りもありますが、どうやってこの花びらの重なりの色が表現できるか?などとよく空想の中で色を作って、楽しんでいます。


今回は私が日本で感じた春の花の色を絵具で作ってみました。





最初はZECCHI(ゼッキ)の水彩絵具。




【使用画材】

基底材:竹和紙 水彩画用

色材:ZECCHI 水彩絵具(ウルトラマリンピンク/インディアンイエロー、カドミウムイエローライト)




ヨーロッパに伝わる古典的な製法で作られており、顔料の色鮮やかな美しさが特徴です。

小さなキューブ状のケースに入っており、好きな色を専用のパレットボックスに入れて持って行けるので屋外スケッチにも最適です。

水彩絵具はパレットで混ぜて調色こともできますが、透明性を生かして色を重ねて色を作ることもできます。



濃いめに塗布したので赤みが強い色もありますが、これを淡くするとサーモンピンクのような色味になります。

同じピンク系の色に調色したイエロー系の色を変えただけですが、色味の違う桜色ができました。濃淡を上手に取り入れることで、遠近感や陰影などの表現もしやすくなります。




次は多様な可能性を秘めたアキーラです。



【使用画材】

基底材:竹和紙 水彩画用

色材:KUSAKABE アキーラ(ナフトールルビン/モノアゾイエローレモン) 





アキーラは水性アルキド樹脂という糊剤を使用しており、テンペラ絵具のように「水性」「油性」を問わず、描くことができます。

油性の性質も持つので油絵具に重ね塗りすることもでき、紙やキャンバスだけでなく金属、ガラスなどの鏡面質の支持体にも直接描くことが可能です。

透明感がありながら発色が良く、また伸びが良いのでとても使い易い絵具です。


単色のアキーラはPIGMENT TOKYOが厳選した41色を販売しております。

18色セットには単品販売以外の色もございますので、好きな色を探してお選びください。ナフトールルビンは18色セットに入っているのですが、赤とピンクの中間のような色で、単色で濃淡をつけて描いてもきれいで、個人的にとても好きな色です。




【使用画材】

基底材:竹和紙 水彩画用

色材:KUSAKABEアキーラ(ナフトールルビン/モノアゾイエローレモン)

メディウム:アルキドメディウム グロス

上:アキーラとメディウムを混ぜて塗布

下:下地にメディウムを塗り、混色したアキーラを塗布



下地にメディウムを塗布した際はあえてランダムに塗って厚みを変えたので、色むらができました。

アキーラ用のメディウムは立体的な質感表現もできるので、花びらの持つ透明感や重量感を水でつける濃淡とはまた異なった表現ができるかもしれません。



ただし、どの絵具でも混ぜる色数が多いと彩度が低くなり、色のトーンが落ちるのでお気をつけください。彩度が高く鮮やかな色を作りたい場合は、2〜3色以内での混色がおすすめです。

色材によっても異なるので、試しながらご自身の好みの色に近づけるとよいと思います。




また、岩絵具から色を探すのも、PIGMENTならではの季節の楽しみ方です。



岩絵具は同じ色の顔料でも、粒子の粗さによって質感や色味が異なります。お好きなメディウムを用いて、表現に合わせた絵具を作ることが出来るのも魅力の一つです。

顔料棚を見ていると、日本の岩絵具の色と名から四季を感じます。自然と共に過ごす日本の感性が表れているかのようです。




もっと気軽に色を楽しみたい方や、岩絵具を初めて使う方はこちらのような画材セットはいかがでしょうか。

岩絵具で描くのに必要な道具だけでなく、下絵付きのボードやパネルがセットされているので、塗り絵のように色を楽しみながら描くことができます。


絵具セット 一覧



「日本画をはじめよう」などのキットは、四季の植物をテーマにした岩絵具セットです。「さくら」以外にも、朝顔、紅葉、椿などたくさん種類があるので、その時の気分で四季折々の好きな植物を選ぶのもいいですね。




色、質感、その物体の持つ雰囲気など、表現要素は様々です。

新たな季節が到来した今日この頃、あなたが想い馳せる春色でお花見をしてみませんか。

Profile

白石 奈都子

PIGMENT TOKYO 画材エキスパート

白石 奈都子

多摩美術大学染織デザイン専攻卒業。オリジナルの紙や和紙、書を主体とした制作に携わり、現在はアーティストとして活動中。

多摩美術大学染織デザイン専攻卒業。オリジナルの紙や和紙、書を主体とした制作に携わり、現在はアーティストとして活動中。