クラッキングメディウムの使い方

クラッキングメディウムの使い方

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剥落やひび割れ、退色など、経年変化した美術作品は時間の経過や人間の営みを象徴しています。ただ、国内外の良質な画材を提供しているPIGMENT TOKYOにとって、そうした時間による劣化はできる限り避けたいものです。

レオナルド・ダ・ヴィンチによる名作《モナ・リザ》の表には蜘蛛の巣状の細かいクラックが生じており、これは専門用語でクラクルーア(craquelure)と呼ばれます。絵画の経年変化とともに次第に現れるこの絵肌は人工的に制作することが難しいことから、絵画の真贋鑑定にも大きな役割を果たしていると言われています。


ひび割れが起きる要因には、基底材や地塗り、使用したメディウム、保存環境などさまざまな理由が考えられますが、そのひとつとして表面と下の層の乾燥速度が異なることで発生します。

同時に、そうした経年による美を愛でるのも、アートならではの審美眼と言っても過言ではないでしょう。


時間が作り出した芸術を再現することは容易ではありませんが、簡単に絵肌をエイジングしたような質感をもたらすことができるメディウムがあります。

それがデリヴァン(DERIVAN)の「クラッキングメディウム」です。

こちらは店頭限定の商品となってますので、ご希望の方はぜひお問い合わせフォームからご連絡ください。



この商品の特徴は、水系絵具と併用するだけで気軽に画面へひび割れ効果を作ることができること。ただ、こちらの商品を使う上での注意点は、モデリングペーストやジェルメディウムのように絵具と混ぜて使用するものではないことです。下記の説明を参考に作業を進めてみてください。



早速、プロセスをみてみましょう。



1.ベースを作る


最初にベースを作ります。絵具がひび割れた隙間から下の色が見えるようになるため、下地とは別の色で塗ると絵具の表面が観察しやすくなります。今回は木製パネルにジェッソで下地を作り、マツダ油絵具のアクリル絵具「パールカラー パールシルバー」を塗りました。


金属の光沢感を生かすために、黒いジェッソを下地に塗りました。



2.クラッキングメディウムを塗る


絵具とは混合せず、滴れない程度の量のメディウムを単体で画面に塗ってください。

塗る時に適度なコシがあると作業を進めやすいため、ナイロン系の刷毛がおすすめです。


このメディウムは適度な厚さで塗れるように、粘度が高く、乾くと平らになる様に作られていますので、重ね塗りはしないでください。正しくクラッキングの効果が得られない場合がございます。 完全に乾燥させたら次のプロセスに進みます。


また、スプレーガンを使って広いエリアを塗る事も可能です。その際25%以上の水を混ぜないようにしてください。詰まりの原因となる可能性がございます。また、人体に影響を与える可能性があるため、スプレーを行う場合は必ずマスクをつけて、噴射したものを吸い込まないよう室内の換気を行ってください。




絵皿などに移して使用するのがおすすめです。ナイロン刷毛は当ラボのリンクよりご購入ください。PIGMENT TOKYO「白波刷毛



3.絵具を塗る


メディウムが乾いたら、12時間以内に上から絵具を塗ってください。この時、重ね塗りはせず、一方向に向かって1ストロークで絵具を塗ると、綺麗に仕上げることができます。

塗り直しを行う事で、クラッキングメディウムを浮かしてしまい、ひび割れを起こすことができなくなります。

今回は同じ下地を使い、塗り方や色を変えて6パターンのクラッキングサンプルを作りました。



画像の左側は、シルバーの上に金色のクラッキングを作りました。装飾和紙のようなシルキーで落ち着きのある表情が特徴的です。

右側はクラッキングメディウムとアクリル絵具を混ぜて塗ったものです。このように、混ぜただけでは表面に変化は起きません。必ずメディウム単体で塗ったのち、完全に乾燥させてから、クラックさせたい絵具を塗ってください。


【使用画材】

基底材:木製パネル

メディウム:デリヴァン クラッキングメディウム

左の色材:松田油絵具 アクリル絵具 パールカラー パールシルバー、パールカラー ゴールド

右の色材:松田油絵具 アクリル絵具 ウルトラマリン



こちらはシルバーの上に黄色、そしてさらにその上に赤を塗った様子です。

黄色と赤色の組み合わせなど明度や彩度に差がある色を重ねると、ひび割れの表現がよく観察できます。


【使用画材】

基底材:木製パネル

メディウム:デリヴァン クラッキングメディウム

左の色材:松田油絵具 アクリル絵具 カドミウムイエロー

右の色材:松田油絵具 アクリル絵具 カドミウムイエロー、アクリル絵具 カドミウムレッドパープル




最後に、クラッキングメディウムを混ぜた絵具の上からさらにクラッキングメディウムを重ね、その上から絵具を塗った場合のサンプルがこちらです。一部ではありますが、半乾きだったウルトラマリンを塗った層の絵具の収縮が始まり、下のレイヤーでは網目状のしわのあるマチエールが生まれ、さらにその上にクラッキングができるという、なんとも言えない表情を作ることができました。

ただし、この用法はメーカーが想定をしてない使い方になりますので、本画で使用される場合は耐久性の面などでテストをしてからご使用ください。




【使用画材】

基底材:木製パネル

メディウム:デリヴァン クラッキングメディウム

色材:アクリル絵具 ウルトラマリン、アクリル絵具 カドミウムレッドパープル



4.仕上げ

ひび割れはストロークに沿って生じます。今回は薄塗りで筆を一方向に動かしてみましたが、ストロークを生かすことで曲線的なひび割れのパターンを作り出すことが可能です。

また、厚塗りをすることで大きなひび割れを起こすことができます。

トップコートにワニスは不要ですが、より光沢感を与えたい場合はご使用ください。



他にも、メディウムを塗る時にスポンジやローラーを使うことで不規則な厚みを作り割れ方をコントロールしたり、木目のような雰囲気を作ったり、アンティーク風の額縁を作ってみたりと、絵画以外の用途にも利用が可能です。

体質顔料を多く含む顔料で着彩するとよりクラックが起きやすいので、水干絵具を使ってみたり、ジェッソそのものをクラックさせてみたりなど、色々な種類の絵具で試してみるのも面白いかもしれません。


Profile

大矢 享

Art Materials Expert at PIGMENT TOKYO

AKIRA OYA

Born in 1989 in Tokyo. Master of Fine Art and Design at Nihon University College of Art. While working at PIGMENT TOKYO as an Art Materials Expert, he also continues his career as a visual artist.

Born in 1989 in Tokyo. Master of Fine Art and Design at Nihon University College of Art. While working at PIGMENT TOKYO as an Art Materials Expert, he also continues his career as a visual artist.