日本書紀冒頭での陰と陽についての一節や、エジプト美術における太陽への渇仰、黄金に輝く仏像、創世記の天地創造で語られる光の誕生など、人類は太古より「光」を崇め、それを信仰の拠り所にしておりました。
《観音菩薩・勢至菩薩立像》,江戸末期 (1615–1868), メトロポリタン美術館蔵
しかし、エジソンらによって室内照明が実用化されるには、18世紀を待たなくてはなりません。それまで諸外国ではもちろん、日本においても主な光源は自然光と焔に頼っておりました。それ故、加工が容易かつ強い光沢を放ち、保存性にも優れている金は世界各国で美の対象となり、様々な美術様式の進化と発展を遂げました。
《老梅図襖》狩野山雪(1589–1651), 1646, メトロポリタン美術館蔵
特に日本美術において、先人たちは「仄暗い日本家屋の環境下で、いかに明るい空間を演出するか」の探求を試みました。その結果、金屏風や蒔絵、切金など金属製の箔を用いた美術作品が沢山生まれました。
《茶筒》江戸末期 (1615–1868), メトロポリタン美術館蔵
そうした極東における多様な箔表現のうち、本記事では「砂子」という技法をご紹介します。そもそも砂子とは、竹製の筒を通して細かくした箔、及びそれを画面に撒く技法です。これは、経巻や色紙など書の料紙装飾に多用されるほか、絵画では顔料の代わりとして地面や霞の部分などに用いられています。
《法華経断簡》九条兼実 (1149–1207),12世紀,メトロポリタン美術館蔵
歴史的には正倉院御物に例が見られており、奈良時代からの料紙装飾法とされています。また、鎌倉時代から後は、大小の切箔や野毛と共に撒かれて技法も発展しました。
PIGMENTでは、その「砂子」を初心者の方でも気軽に体験いただけるセットを販売しております。本セットをお求めいただくと、3ステップで砂子の技法を体験頂けます。
①まず、和紙へ膠を引きます。
②そして箔を砂子筒の中に入れ、筒の底をこすように和紙へ散らします。
③その後、上から合紙を押し当てて、乾かしたら完成です。
もちろん金と銀を交互に振っていただいても美しい表情が作り出せます。
また、色の付いた和紙にも同じ方法で散らして頂くと、様々な表現が可能です。
Instagramにて、作業風景の動画も公開しております。是非ご覧ください。
https://www.instagram.com/p/BX2RmQCAXGh/
こちらの「砂子セット」はPIGMENT店頭ではもちろん、ECサイトでも販売中です。箔が生み出す和紙の煌めきと美しさを、ご自身の目で確かめてみてはいかがでしょうか。
また、PIGMENTでは箔入門講座を開催しております。砂子、平押し、切箔の3つ技法を習得いただけます。実際に講師に教わってみたいとお思いの方は併せて、リンク先をご覧ください。
・箔入門講座
2019/01/25(Fri) 19:00 - 20:30
https://pigment.tokyo/products/74
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