PIGMENT岩泉氏が語るメディウムの概要とその特質 vol.1

PIGMENT岩泉氏が語るメディウムの概要とその特質 vol.1

PIGMENTには4500色にも及ぶ顔料のほかにも、それと混ぜて絵具を作るための糊材も沢山お取り扱いしております。今回は絵具の発色を決める重要な要素の1つでもある糊材について、PIGMENT岩泉氏へお伺いしました。

 

 

―前回のお話で「顔料だけで絵具をつくることはなく、絵具にするためには糊材が必要」ということを教えて頂きましたが、「糊材」とは一体どういうものなのですか

顔料自体に定着力はなく、これらはいわば色が付いた粉のような状態です。何かに着彩するためには、接着をするための糊材が必要となります。私たちはそれらの糊材のことを「メディウム」と呼んでいます。これらは顔料の発色や質感を決めるのに、重要な役割を持っています。つまり、顔料とメディウムが合わさって、初めて絵具になるのです。

 

 

 

―全部で何種類くらいのメディウムをPIGMENTでは取り扱っているのでしょうか

およそ10種類程度扱っていまして、その中でも大きく分けて油系エマルションと水系エマルションの2つの性質に分けることができます。油系のメディウムはその言葉の通り、油を主成分とする水に溶けないメディウムです。これらはテレピンやペトロールなどの有機溶剤を使用して、溶解をします。皆様の身近なところですと、マニキュアの除光液もその一種です。油系のメディウムで代表的なものを挙げますと、リンシードオイルやダンマル樹脂、蜜蝋などがそれに相当します。

 

 

 

―それに対して、水系はどのようなものなのですか

水で薄められるものが水系のメディウムとなります。種類としては膠や、アラビアゴム、カゼイン、卵、アクリルエマルションなどがあります。

 

 

 

―油系と水系で、それぞれどのような特徴があるのでしょう

油系は、顔料を水で濡らしたようなしっとりとした色味になります。それに対して水系は油と比べてしっとりした質感は控えめですが、透明感のある色味になりますね。

 

 

―なるほど、もう少し油系と水系の詳細な特徴を教えて頂けないでしょうか

こちらの色見本をご覧ください。この色見本は何色の顔料が使用されていると思いますか

 

 

 

―様々な青のグラデーションありますね。何色かの絵具を混ぜでいるのですか

実はですね、これらは全て一種類の顔料で塗られており、変えているのはメディウムだけなんです。一番上はただ顔料を水で溶いただけの状態のもので、順番にアラビアゴム、膠、アクリル樹脂、リンシードオイルを使用しております。

 

―なるほど、メディウムを変えるだけで様々な色味を作り出すことができるのですね

はい。4500色にも及ぶ種類の顔料に10種類のメディウムに加え、処方によってはメディウム同士を混色することも可能です。その掛け合わせ方次第では、何十種類、何百種類もの色味を生み出すことができます。

また、産業革命以前はチューブの絵具はございませんので、絵画工房それぞれのレシピがあり、そこでは様々なメディウムの調合がなされておりました。そういった意味でも、顔料という絵画の主役を引き立てる、影の立役者がメディウムなのです。

 

 

本記事で紹介したメディウムはECサイトでお求めもいただけます。

PIGMENT TOKYO「展色剤・膠」

 

 

また、当ラボ取り扱いのメディウムのなかでも初心者向けの商品を一部ご紹介します。ご興味のある方は是非お試しください。

 

 

Profile

大矢 享

PIGMENT TOKYO 画材エキスパート

大矢 享

1989年東京生まれ。 日本大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻博士前期課程修了。 PIGMENTにて画材エキスパートとして携わりながら、平面作品を中心にアーティスト活動中。

1989年東京生まれ。 日本大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻博士前期課程修了。 PIGMENTにて画材エキスパートとして携わりながら、平面作品を中心にアーティスト活動中。