パステルには大きく分けるとドライタイプとオイルタイプがあります。
オイルタイプはその名の通り油分を含んだパステルですが、「聞いたことはあるけど使ったことがない」という方も多いのではないのでしょうか。
油絵のような表現も可能でありながら、携帯性に優れ、また色褪せやひび割れもなく定着力があるのでどんな表面にも自由に使えるパステルです。
では一体どのような色材なのか、今回は「オイルパステル」をご紹介いたします。
どのくらい描き心地が違うのか、オイルパステルとドライパステルを描き比べてみましょう。使用した商品と、オイル・ドライパステルの特徴ついて、下記をご参照ください。
■オイルパステル
顔料・オイル・ワックスで練られたパステル。
・定着力、固着力がある。
・しっとりと柔らかい描き心地。
・発色がよく、耐光性、隠ぺい力が高い。
・濃色、重ね塗り、ぼかし技法が可能。
・様々な基底材に塗る事が可能。
(段ボール、木、ベニヤ板、陶器、石膏、金属、プラスチック、ガラス、フィルム等)
セヌリエのオイルパステルは油絵のような重厚感のある描画が可能でありながら、油絵具では描くのが難しい紙はもちろん、様々な基底材にも使えます。
パールカラーセットは、パール色、メタリック色をメインに構成されており、普通色と併せて使うのもおすすめです。
■ドライパステル
顔料を糊材で固めたパステル。
・紙への定着は良いが固着力が弱い。
・発色が良く、耐光性が高い。
【ハード】折れにくく、硬め。角で線、面で広面の描画が可能。
【ソフト】伸びが良く、指などで伸ばしやすい。細かい描写は難しい。
日本最初のソフトパステル製造メーカー「王冠化学工業所」のパステルです。日本の光にあわせた色を一つ一つ手作業で丁寧に作られています。
では、この2種を描き比べてみます。
【使用色材】
・左:オイルパステル
・右:ゴンドラパステル(ドライパステル)
【基底材】
・スライト紙(画用紙)
どちらも発色が良く、見た目は大きく変わりませんが、よく見るとオイルパステルは粘度のある筆跡が見られます。
指で擦って混色してみたところ、ドライの方が粒子が広がるので柔らかい色合いの印象です。(画像一番下の部分)
また、定着剤をしていない状態で描いた紙を立てると、ドライパステルの粉が落ちますが、オイルパステルはしっかりと定着しています。
ではもう少し、オイルパステルの特性を生かして描いてみます。
【使用色材】
・オイルパステル パールカラー
・彩墨あや(浅葱)
【基底材】
・竹和紙 水彩画用
画像上部は、オイルパステルの上から彩墨あやを塗りました。オイル成分が水分を弾いて、パステルの箇所がマスキングされます。
下の方はオイルパステル3色を重ね、紙面上にて指で混色しています。塗り方もランダムなので厚みの違いもあり、混色により新たな色が生まれています。また、パールタイプは、光の影響で色に変化や深みが生まれます。
それぞれのパステルに良さや特性があるので、併用する画材等を効果的に使うとことで、より奥行きのある描画表現に繋がるのではないでしょうか。
次は、紙以外の基底材に描けるか試してみました。
【使用色材】
・オイルパステル、オイルパステル パールカラー
【基底材】
・プラスチック(白)
普通色のオイルパステルは、きれいに色が乗りました。パールが強い色だと滑って少し乗りにくいのですが、定着はします。ただし固着はしないので、紙や指で拭くと色が落ちます。そのため、その特性を生かして柔らかい紙や布でしっかりと拭くことで、描き直しもできます。
プラスチックやガラスなどの鏡面素材を使用する際は、定着剤等で仕上げをおすすめいたします。
基底材により異なる発色を楽しめるところも、オイルパステルの魅力の一つではないでしょうか。
作品はもちろん、ドローイングやエスキース、スケッチなど、色調や色数のお好みやご用途に合わせてお選びください。
また、パステルについてはこちらの記事でもご紹介しております。よろしければご参考にしてください。
【ARTICLES】感じるままに描く『気軽に使える色材たち』
基底材や併用する画材の組み合わせにより、使えば使うほどに表現方法を発見できるオイルパステル。ご紹介した内容はまだ数ある魅力の一片に過ぎません。
皆様の新たな可能性との出会いにお役立てください。