私のおすすめ「岩絵具」

私のおすすめ「岩絵具」

現役のアーティストはどんな画材を、どうやって使っているのか、気になりませんか?

画家として活動もしているPIGMENT TOKYOの画材エキスパートに、その秘密をちょっと聞いてみました。


今回は、芹澤マルガリータさん。店頭だけでなくInstagramのライブ動画にもご出演されているので、配信を通してお会いになった方も多いのではないでしょうか。

以前にも当ラボの記事でご紹介いたしましたが、主に岩絵具や膠といった日本画の画材を使用して作品を制作されています。


今回は更に、作品制作に使っている岩絵具や画材に焦点を当てました。





前回の記事は、こちらよりご覧ください。


【PIGMENT TOKYO×画材エキスパート vol.1~芹澤マルガリータ】




ー作品の色使いがとても華やかできれいですね。 実際にどのような顔料を使っていますか?

また、芹澤さんならではの画材や使い方があれば教えてください。


ありがとうございます。私は和紙に膠と岩絵具という、いわゆる日本画で使用される画材を使っています。好きな色味を選んで使用しているので、天然と人工の違いにこだわりはありませんが、やはり天然の石から出来た色は大変美しいなと思います。

色は混色すればするほど濁りますので、なるべく鮮やかな発色になるように心がけています。

具体的には、トキ皿上で混ぜるのではなく、一色一色を画面上で重ねています。砂状の絵具のため下の色が粒子の間から見えてくるので、そこで色合いを調整しています。

あとは、粒子の粗さですね。粗い方が色が濃くキラキラして質感が出ます。そのテクスチャを利用して、遠近感を出したりしています。


下塗りには水干という胡粉ベースの絵具を使用していますが、さっと色面だけ、仕上がり予定と反対の色をおいています。





こちらは、芹澤さんが現在制作中の作品。水干で描かれた下塗りの様子とのこと。

どんな仕上がりになるのでしょうか。




@Margarita Serizawa

「Plitvice06」2020年(2020年12月現在、製作中)




下記の顔料は、芹澤さんがよく使用されている岩絵具。

「新岩絵具」という顔料で、釉薬と金属酸化物で製造された着色ガラスの塊から作られた絵具です。耐久性が非常に高く、天然岩絵具には無い幅広い色調が特徴です。




ー下塗りと全然違いますね!顔料と膠ならではの透明感のある、繊細な色合いですね。下塗りと仕上げの描き方や、筆の使い方に違いがあれば教えてください。


下塗りは色面のみで描き込みはしていないので、主に刷毛を使用しています。大きな面を塗る際には、下塗りと仕上げの両方で使用しています。

柔らかくて含みのよいヤギ毛のもので、毛量が多くなく薄めの刷毛が使用感としてはお気に入りです。分厚いと刷毛が絵具を含みすぎてしまうので、いつも厚みのないのものを選んでいます。


 



ー芹澤さんと言えば「岩絵具と膠」というイメージがありますが、普段はどの膠を使用していますか?また、おすすめの膠があれば教えてください。


様々なメディウムの中で、膠は岩絵具を一番美しく、そのままの色で見せてくれるものです。学生時代は今はなき三千本膠を使用していましたが、PIGMENT TOKYOで扱っている顆粒の牛膠はその使用感に近いと感じます。

一番おすすめなのは、オリジナルの牛膠溶液です。2倍濃縮しているので膠液に粘度があり、絵具もムラなく綺麗に塗ることができ、初めて使った時は衝撃でした。また微量の防腐剤以外、余計なものが入ってないのもいいですね。




ー今後、もっと使いたい画材や技法などはありますか?


最近、箔を少々使用するようになりましたが、今後はもっと活用していく予定です。

エフェクト顔料も何度か試しましたが面白い素材ですし、岩絵具と相性がよいと感じるので取り入れようと思っています。

私の作品はカラフルなので、墨を使うことがないのですが、硯や墨に今興味があるので、どうにか取り込めないか検討している最中です。




@Margarita Serizawa

「Plitvice05」 2020年 

サイズ:F6(41cm×31.8cm)

高知麻紙、岩絵具、胡粉、水干、膠、アルミ箔argarita Serizawa



ー箔を使った作品も拝見しましたが、とてもきれいな作品でした!新しい作品も楽しみにしています。

最後に、今後のご予定や告知などあれば教えてください。


ありがとうございます。2021年2月22~27日に東京の「アートスペース羅針盤」にてグループ展を予定しています。他のPIGMENTスタッフも参加いたしますので、どうぞお楽しみに!






どんな風に作品ができ、新しい試みも芹澤さんが使うことでどのような表現になるのか、お話を聞いているだけでもワクワクしました。

PIGMENT店内には、芹澤さんや他のスタッフの作品も展示されておりますので、ご来店の際は是非ご覧ください。


また、芹澤さんのグループ展の詳細や作家活動については、下記のWebサイトやSNSにてご案内しております。こちらも併せてご覧ください。



芹澤マルガリータ

【WEB】http://margarita-s.com/

【Instagram】https://www.instagram.com/margaritaserizawa/


展覧会情報

会場 アートスペース羅針盤

会期 2021年2月22日(月)~27日(土)

住所 東京都中央区京橋3-5-3 京栄ビル2F

TEL 03-3538-0160

WEBhttp://rashin.net/



こちらの展示は終了しております。



・プロフィール

芹澤マルガリータ

モスクワ生まれ

2009年 京都造形芸術大学大学院 芸術研究科 芸術表現専攻 修士課程修了

2003年 京都造形芸術大学 美術・工芸学科 日本画コース卒業


・個展

2019年 Traveling 展 アートスペース羅針盤(東京)

2016年 芹澤マルガリータ展 アートスペース羅針盤(東京)

2013年 カラフル 展 アートスペース羅針盤(東京)

2008年 立体アートギャラリー射手座(京都)

2006年 ロシア国立極東大学博物館(ウラジオストク)


・グループ展

2020年 羅針盤セレクション展 アートスペース羅針盤 (東京)

2019年 Moment-瞬間- GALLERY ART POINT (東京)

デビュー新人賞2019 フジヰ画廊(東京)

2018年 春の賛歌展 耀画廊(東京)

2017年 一期一絵展 杏林大学病院(東京)

2015年 女流日本画展Vol.01 アートスペース羅針盤(東京)

2014年 新人セレクション#4 個四潭々展 粟津画廊(東京)

2013年 Benetton Collection Imago Mundi, Italy (イタリア)

その他、都内を中心に多数展示


・その他

ベネトンコレクション所蔵

デビュー新人賞2019 入選

Profile

白石 奈都子

PIGMENT TOKYO 画材エキスパート

白石 奈都子

多摩美術大学染織デザイン専攻卒業。オリジナルの紙や和紙、書を主体とした制作に携わり、現在はアーティストとして活動中。

多摩美術大学染織デザイン専攻卒業。オリジナルの紙や和紙、書を主体とした制作に携わり、現在はアーティストとして活動中。