メタシャインシリーズをアクリル絵具と混ぜてみよう

メタシャインシリーズをアクリル絵具と混ぜてみよう

メタシャインは、強い光輝性を特徴とした無機顔料です。フレーク状のガラスを基材とし、その表面に金属や金属酸化物をコーティングすることで美しい光沢を放ちます。

 

PIGMENT TOKYOではメタシャインチタニアコートを8種類、とメタシャインシルバーコートの3種類をお取り扱いしており、今回はチタニアコートシリーズをご紹介します。

粒子径がΦ80µmで粒子の細かいGT1080、少し荒めで粒子径がΦ600µmのGT5600の2種類をそれぞれ4色ずつ、合計8種類の顔料がございます。

こちらの色は瓶ごとにレッド、ブルー、イエロー、グリーンと色名がついておりますが、一見すると大きな色の違いがありません。「ではなんで色名がついてるんだろう?」とお思いの方もいらっしゃるでしょう。

 

 

メタシャイン チタニアコート

 

今回ご紹介するピグメントはこちら。

メタシャイン チタニアコート GT1080RR(レッド)

メタシャイン チタニアコート GT5600RR(レッド)

メタシャイン チタニアコート GT1080RB(ブルー)

メタシャイン チタニアコート GT5600RB(ブルー)

メタシャイン チタニアコート GT1080RY(イエロー)

メタシャイン チタニアコート GT5600RY(イエロー)

メタシャインチタニアコート GT1080RG(グリーン)

メタシャイン チタニアコート GT5600RG(グリーン)

 

 

エフェクト顔料は種類によって、下地の色と光源の角度、そして見る角度によって色が大きく変化いたします。

当ラボのオンラインショップの商品ページで公開している塗り見本がこちら。

顔料の状態ですとほんのりと赤みを帯びたパール系顔料に見えますが、黒い下地に塗るとこのような色彩になります。

 

 

 

また、こうした顔料に黒系の顔料や絵具を添加することで、下地を暗くした場合と似た効果を得ることができます。

こちらは以前の記事でご紹介した、ミラバル パシフィックトゥインクル 5402にホルベインの黒系顔料ペーストを混ぜている様子です。完全に混ざりきってない元の顔料の白い部分と、黒と混ざり合って色が変化している部分があるのが分かります。

 

 

PIGMENT ARTICLES「人気エフェクト顔料で遊ぼう」より

 

 

この混色によって色が変化する効果を応用して、アクリル絵具と混ぜ合わせることでチューブから出した時とはまた違った色味を作り出すことができます。先ほどご紹介したように、メタシャインはガラスを基材としているため、着色力の強い顔料を使用したアクリル絵具と混ぜると色が負けてしまいます。

 

今回は、その作用を利用して、偏光の効果が見られるアクリル絵具を作成してみました。顔料を添加すると糊材不足で剥離の可能性があるため、今回はジェルメディウムを添加しています。粒子径の大きいGT5600の場合は、少し多めにジェルメディウムを追加すると良いでしょう。

ジェルメディウムは水溶性のアクリル絵具系のメディウムで、アクリルエマルションと比べて透明性が高いため、筆跡を生かした表現や重ね塗り、マチエールなどの表現ができます。

 

 

では早速色を選んでいきましょう。まず最初に使うのはGT1080RR(レッド)とGT5600(レッド)です。

この顔料が持つ偏光性を生かした色を作りたかったため、無関係な色や補色となるようなものよりは、色相環で隣り合うような絵具を混色しました。

 

【使用画材】

基底材:竹和紙水彩用

メディウム:ジェルメディウム

色材:メタシャインGT1080RR(レッド)メタシャインGT5600RR(レッド)マツダ アクリル絵具 シアニンブルー

 

 

次は、青系に緑の絵具を混ぜてみましょう。

ハイライトの部分に広がる、ほんのりとした青味が美しいです。上記のRR(レッド)同様、粒子の大きいGT5600シリーズではほとんど反射が起きず、少しザラザラした印象を受けます。今回はジェルメディウムを使用しているので粒子径が大きな顔料が少し透けて、筆で塗った跡から不思議な模様が浮かび上がっています。

しっかりとした粒子感と偏光感を得たい場合は、さらに厚塗りする必要があるでしょう。

 

 

【使用画材】

基底材:竹和紙水彩用

メディウム:ジェルメディウム

色材:メタシャインGT1080RB(ブルー)メタシャインGT5600RB(ブルー)マツダ アクリル絵具サップグリーン

 

 

こちらは、イエロー系に赤を添加しました。アクリル絵具には、油絵具や透明水彩絵具同様、混色した時に他の色に影響を強く与える色と、そうでない色があります。

この記事で使用したものは、なるべく透明度が高く、強く発色するものを使用しているので、添加するアクリル絵具は少量でも十分です。明部の赤味からオレンジにかけてのグラデーションが良い発色をしていました。

 

色によってハイライトが美しいもの、ローライトが美しい色があるのも、エフェクト顔料とアクリル絵具を混色したことで生まれた魅力のひとつかもしれません。

 

 

 

【使用画材】

基底材:竹和紙水彩用

メディウム:ジェルメディウム

色材:メタシャインGT1080RY(イエロー)メタシャインGT5600RY(イエロー)マツダ アクリル絵具カーマイン

 

 

続いて、グリーン系にイエローグリーンの絵具を加えてみました。色名こそ「オリーブグリーン」となっていますが、この絵具はどちらかというと黄色がかった緑色とでも言いましょうか、かなり黄味の強い絵具です。

そのため全体は黄色系ながらも、うっすらと全体的にGT1080RG(グリーン)やGT5600RG(グリーン)の色味が広がっています。

 

【使用画材】

基底材:竹和紙水彩用

メディウム:ジェルメディウム

色材:メタシャインGT1080RG(グリーン)メタシャインGT5600RG(グリーン)マツダ アクリル絵具オリーブグリーン

 

 

最後に、メタシャインGT5600RG(グリーン)とマツダ アクリル絵具オリーブグリーンを混ぜ、盛り上げて絵肌を作るような感覚で着色しました。

この記事の色見本は全て竹和紙水彩用という厚手の水彩紙を使用しているのですが、紙に着彩するにはひび割れの危険性が生じます。ある程度まで絵具を厚く塗ることで、全体にGT5600シリーズの荒い粒子が層を作り重厚感のある絵肌を作ることができました。

ただし、同様の表現をする場合は、基底材をパネルにしたり、メディウムを少し多めに添加するなど、画面の劣化を防ぐ対策を行うと良いでしょう。

 

 

 

【使用画材】

基底材:竹和紙水彩用

メディウム:ジェルメディウム

色材:メタシャインGT5600RG(グリーン)マツダ アクリル絵具オリーブグリーン

 

 

このように、エフェクト顔料はただ単に黒系の基底材に塗ると色が変化するだけでなく、他の絵具や色材と混色することで更なる可能性を見出すことができます。

顔料瓶や塗りサンプル、商品情報などを参照しながら、メタシャインに合いそうな発色の良い色材を探す作業は、通常の絵具づくりとは違った楽しみを得ることができました。

 

今回ご紹介した技法は、すでにメディウムが練り込まれているチューブ絵具を使用しておりますので、顔料から練り合わせるより少し効率よく作業を進めることができます。

ちょっとした実験感覚で、メタシャインの偏光感を楽しんでみませんか。

 

 

 

Profile

大矢 享

PIGMENT TOKYO 画材エキスパート

大矢 享

1989年東京生まれ。 日本大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻博士前期課程修了。 PIGMENTにて画材エキスパートとして携わりながら、平面作品を中心にアーティスト活動中。

1989年東京生まれ。 日本大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻博士前期課程修了。 PIGMENTにて画材エキスパートとして携わりながら、平面作品を中心にアーティスト活動中。