水で溶ける油絵具、デュオで描く

水で溶ける油絵具、デュオで描く

更新日:2024年8月20日

 

 

※こちらの記事で紹介している「ホルベイン画材株式会社の水可溶性油絵具 デュオ」は取り扱いが終了しました。


油絵具は塗り重ねることで強靭で光沢感のある画面を作ることができる絵具ですが、乾燥まで非常に時間がかかるということもさることながら、希釈材として使用するテレピンやペトロールなどの揮発性油の取り扱いに充分な注意が必要です。
ホルベイン画材株式会社の「ラベル表記の見方/製品を安全にお使いいただくために」では、こうした画用液の使用にあたり「絵具・溶剤を使用中は換気、通気をよくしてください。」と記されています。

 

そのような問題をクリアし、自宅などで、快適に油絵を楽しみたいという方のために開発されたのが、ホルベイン画材株式会社の水可溶性油絵具 デュオです。

本来、油絵具はその名の通り「油」を使用しておりますので、水に溶けることはありません。しかしデュオは、ほんの数%の「界面活性剤」が配合されています。この界面活性剤が水と油を繋ぐことで、ペトロールなどの揮発性溶剤のかわりに水で薄められるのです。

 

静物画を描くプロセスに沿って、デュオで様々な作業を進めてみました。まずは下地作りです。

油絵具は水系の絵具と比べて乾燥速度が遅く、適度な粘度があり、豚毛などの硬い筆で薄くのばすように描くことができます。ただ、前述のとおり乾燥までの待ち時間が長いため、油絵具のみで短時間で仕上げることは容易ではありません。そこで早速この絵具の特性を利用します。

 

この絵具水可溶性であるため、アクリル絵具を混ぜることも可能です。これにより、油絵具特有の粘度を保ちながら、下地材をつくることができます。

この作品では松田油絵具株式会社のアクリル絵具、チタニウムホワイトとデュオのバーントアンバーを混ぜて調色しました。

  

 

 

こうした下書きのプロセスの場合、従来の油絵具では揮発性油で薄めた絵具で描きますが、デュオではこうした薄塗り表現も水でおこなうことができます。

 

 

 

 

 

 

次のプロセスで完成イメージに近い色で着彩を進めました。
デュオは通常の油絵具同様、乾燥するまで数日を要するため、乾燥速度を促進させるために、デュオデュオクイックドライングメディウムグロスを使用しました。
このメディウムを絵具と同量程度混ぜることで、絵具を約1日で乾燥させることができることができます。もし、筆運びが悪くなった場合はペインティングオイルを加えて、粘度を調整してください。

  

 

 

そして次に、色を載せていきます。

ここでDUOの乾燥速度を促進させるために、DUOクイックドライングメディウムグロスを使用します。

このメディウムを絵具と同量程度混ぜることでDUOを1日程度で乾燥させることができるのですが、透明度が上がってしまったり、色の発色が落ちてしまう可能性もあるため、使用は最低限にすると良いでしょう。

また、筆運びが悪くなった場合はペインティングオイルを加えて、粘度を調整します。

 

 

 

 

 

先ほどよりも使用する油の量を増やして、ハイライトやモチーフの細い部分などの加筆を行います。
油絵具には「ファットオーバーリーン」という、画法が存在します。重ね塗りする絵具は下の層の絵具より油分を多くすることで、画面のひび割れを防ぐのはもちろん、作品に乾性油特有の光沢感を与えることができます。

ここではデュオ専用のリンシードオイルを添加しました。
この他にも水溶性のスタンドオイルもラインナップされており、アーティストの好みに合わせて古典技法などの絵画表現に挑戦も可能です。

 

 

 

 ※こちらの商品は販売を終了いたしました。

 

画材の準備等も合わせて、6時間未満で仕上げることができました。

もちろん片付けも簡単で、筆はアクリル絵具等と同様に、水と石鹸を使えば綺麗に洗うことができます。

ぜひ、ホルベルンのデュオで新しいアート生活をスタートしてみてください。

 

 

Profile

大矢 享

PIGMENT TOKYO 画材エキスパート

大矢 享

1989年東京生まれ。 日本大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻博士前期課程修了。 PIGMENTにて画材エキスパートとして携わりながら、平面作品を中心にアーティスト活動中。

1989年東京生まれ。 日本大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻博士前期課程修了。 PIGMENTにて画材エキスパートとして携わりながら、平面作品を中心にアーティスト活動中。