PIGMENT TOKYOでは、4500色にも及ぶ色材を販売しております。
その中でも天然の鉱石を砕いて作られた天然岩絵具の色は、天然由来の色材特有の落ち着いた発色と煌めきを私たちに見せてくれます。
しかし、全ての鉱物が岩絵具に適しているわけではありません。
岩絵具とは、いわば色のついた砂。粒子を細かくすることで光が乱反射し、色の濃さや彩度に変化が起きるため、原料でみる発色とは少し異なってくるからです。
例えばウルトラマリンでお馴染みの、青金石(ラズライト)を主成分とするラピスラズリをみてみましょう。
フェルメールの作品でみられるような濃厚な青というよりは、少し白飛びしているような印象を得ることでしょう。
それもそのはず。ここからチェンニーニと呼ばれる特殊なプロセスを経て、初めて下記のような天然ウルトラマリン色になります。
古来より天然ウルトラマリンが高価な理由は、その原石の貴重さはもちろんのこと、何世紀も受け継がれてきたその「技術」にも付加価値がついているからなのです。
また、理論上は下記のような宝石店や博物館で目にするような宝石も、砕けば「顔料」になることもできます。
左上_Photo by Hiro1960 (photoAC)、右上_Photo by Hiro1960 (photoAC)
左下_Photo by pebble (photoAC)、右下_Photo by Hiro1960 (photoAC)
画像は左上からルビー、エメラルド、トパーズ、ジェード。
ルビーは和名で「紅玉」と言われており、こちらを原料とした岩絵具も当ラボで販売しております。
それがこちらなのですが……粉状にすると、こんなに淡い色になってしまいます。
たとえ綺麗な石を砕いても綺麗な顔料になることはない、というのは少し不思議ですね。
そんな宝石の名を冠して作られたのが、この「ジェムトン」シリーズです。
今回は上記画像でご紹介したルビー、エメラルド、トパーズ、ジェードをご紹介します。
この顔料はマイカに酸化チタンや酸化鉄が被覆したパール顔料です。マイカとは以前の記事でもご紹介した雲母のことを指します。昔からある雲母が、今はこのような進化を遂げているとは驚きです。
「煌めく雲母〜その歴史と使い方〜」より、マイカ(雲母)の原石
今回は上記のエフェクト顔料を白地と黒地、2種類のベースに着彩をしました。
ジェムトンシリーズは粒子が細かく、顔料がきれいに分散しません。そのような時は、こちらの分散剤を使うと絵具が作りやすくなりますので、おすすめです。
【使用画材】
色材:ジェムトンルビー、ジェムトンエメラルド
ジェムトントパーズ、ジェムトンジェード
メディウム:アクリルエマルション
基底材:竹和紙 水彩画用
早速、塗りサンプルをみてみましょう。ルビー、エメラルド、トパーズについてはベースを黒にしても大きな変化がありませんでした。
顔料の隠ぺい力がほどほどあり、練り合わせたらすぐ使える強みがあります。
ただ黒ベースの方が色味が濃厚なため、エフェクト顔料の重厚感を出したい場合は、下地の色を暗くすると良いでしょう。
色味が大きく異なっていたのはジェムトンジェードです。この顔料は隠ぺい力が弱かったため、ジェード(翡翠)色に近づけるためには、下地の処理が必要です。
例えばプラモデル作りでは明るい色は下地を白で、暗い色は黒地で仕上げておくと良いと聞きますが、こうした特殊な顔料を使用される場合は、余ったパーツなどでテストをしてからご利用ください。
天王洲アイルにあるPIGMENT TOKYOでは、こうしたエフェクト顔料を実際に目で見ながら選ぶことができます。
市販の絵具にはない特別な顔料をお求めの場合は、ぜひ当ラボにお越しください。