アートの街、天王洲アイルでは毎日たくさんの「美」と触れ合うことができます。
また大型連休に合わせて、リバーサイドの各アートスポットを繋ぐ特別なコラボレーションイベントも企画しております。
先月の4/24(土)には、「PIGMENT TOKYO」とコレクターズミュージアム「WHAT」、アートカフェ「WHAT CAFE」のコラボレーションイベント「親子で体験!天王洲アートツアー」が開催されました。
今回はそのツアーの様子をダイジェストでご紹介します。
まず午前中はWHATと建築倉庫を巡りました。
WHATとは、寺田倉庫がコレクターから預かり、保管する貴重なアート資産を公開し、その価値と魅力を広く開花させることを目的とした芸術文化発信施設です。
5月の企画は、高橋龍太郎氏とA氏という2名の現代アートコレクターのコレクションを鑑賞できる「-Inside the Collector’s Vault, vol.1-解き放たれたコレクション展」です。
https://what.warehouseofart.org/exhibitions_events/insidethecollectorsvaultvol1/
学芸員の中橋さんより展覧会の概要が説明され、今回は”対話型鑑賞”という、会話を通して作品を鑑賞するのがコンセプト。
美術館のスタッフと参加者、大人子供の垣根を越えて「これって何が描いてあるだろう?」「どんな素材をつかってるのかな?」「何を表してるんだろう?」などなど、生きたコミュニケーションが参加者で交わされました。
学芸員の中橋アレキサンダー真理さん。
始めは近藤亜樹による《ウータン山》を鑑賞。
観るものを圧倒する情熱的なストロークで描かれた巨大な絵画を前に、参加者の皆様は絵本を眺めるかのように各々が思いついた物語を語り合ったり、「こんなものが描かれているよ」「こっちにはこんなものが!」「どんなことを伝えたいんだろう?」と楽しみながら鑑賞をしました。
画中に描かれたさまざまなモチーフたちを探すのに興味津々です。
1階のフロアで作品鑑賞を終えたのち、上のフロアへ移動。
2階中央に鎮座するされた野澤聖による《obsession −蒐集家の肖像−》は、まさにこの展示を見守る守護神のようです。
この作品のモチーフは、コレクターでもある高橋龍太郎氏。
同じく学芸員の中橋から概要説明があったのち、じっと作品を向き合うお子様もいらっしゃいました。彼は一体、描かれた高橋氏とどのような「対話」をしたのでしょうか。
こうした言語を介さない心の会話も、美術作品を理解する上で大切なコミュニケーションのひとつです。
グラファイトで描かれた高橋氏をじっと見つめる参加者。
次は梅沢和木による《ジェノサイドの筆跡》です。
アニメ、ゲーム、サブカルチャのモチーフをコラージュして描かれたこの作品。
「このゲーム知ってる!」「あのキャラクタを見つけたよ!」などなど、1Fで鑑賞した時とはまた違った発見を参加者同士でディスカッションされているのが印象的でした。
物心ついた頃からスマートフォンやテレビゲームに触れている子供達にとって、この作品はどのように映ったのでしょう。
《ジェノサイドの筆跡》のコンセプトを説明する学芸員の中橋さん。
最後に、A氏コレクションによる奈良美智の作品群を鑑賞しました。
「さてこれは何を背負っているでしょう」という中橋からの質問に「将棋のコマかな?」「家かな?」「箱?」などなど、対話型鑑賞ならではの先に答えが明示されてないからこそ可能な会話がなされていました。
奈良美智の作品が一望できるフロア。プライベートコレクションでこの数とは脱帽です。
WHATでの作品鑑賞を終えたのち、建築倉庫の「模型保管庫」を見学しました。
建物をつくるプロセスでの貴重な資料であるにも関わらず、保管する場所がなく、破棄されてしまうこともあるという建築模型ですが、寺田倉庫ではそれもひとつの「アート」として捉え、それらを保管する事業を展開しております。
こちらのフロアでは建築家や設計事務所からお預かりしている建築模型を保管しながら展示しています。
少しひんやりとした巨大なフロアにて、規則的に並べられた沢山の模型たちに目を奪われた参加者の皆様。
すごい!すごい!と熱中しながら建築模型を鑑賞しておりました。
模型内で何かを見つけた様子。
ふたつの施設を回った後、自由鑑賞時間を経てお昼休憩となりました。
WHAT CAFEは、現代アートの魅力をより多くの人々に届けること、アート界の未来を担うアーティストを支援することを目的につくられた天王洲のアートスポットです。
最先端のアート作品と触れながら食べるランチは、きっと皆様の五感を刺激してくれることでしょう。
WHAT CAFEでの展示の様子(一部)
当カフェでは、このようなメニューを提供しております。
日替わりパスタセット1,000円(税込)+ランチデザート100円(税込)
その他、コーヒーバリスタによる自慢のコーヒーを、400円(税込)よりご用意しております。
2時間のお昼休憩を終えたのち、PIGMENT TOKYOのワークショップ「クレヨンづくり」がスタートです。
だれでも一度は触れたことのあるクレヨンを三原色(赤・青・黄)の顔料を使って制作しました。
大人から子供まで簡単に体験できるよう、当ラボの画材エキスパートがアレンジしたレシピをもとにワークショップは進みます。
工程表を真剣に眺める参加者。
「クレヨンづくり」のワークショップを担当する講師の斉藤桂。PIGMENT画材エキスパートでもあり、プロのアーティストでもあります。
まずはクレヨンの元となる材料を整えるところから。手順に沿い、蜜蝋(みつろう)と補助剤をカップに加えてヒーターで温めます。
分量を大きく間違えてしまうと描き味が悪くなったり、うまく顔料と混ざらないことがあるため、慎重に素材を投入します。
クレヨンの素材のひとつである蜜蝋を加えている様子。ここに顔料を加えてクレヨンを作ります。
三原色と白があれば、無限の色の組み合わせを生み出すことができます。大人から子供までお楽しみいただけるよう、色のレシピ表もご用意しました。
スポイトでオイルを加える様子はまさに「ラボ」です。
温まった蜜蝋が溶け、顔料と混ざっていく様子を観察中。
溶解したクレヨンの素。マーブリング模様が綺麗です。
クレヨンの素がヒーターの熱で液体になるのを待っている間、流し込む型を油粘土で作ります。造形にこだわるがあまり、お子様よりも大人の方が熱中してしまう瞬間や、お子様が大人にアドバイスする場面も。まさに親子ワークショップならではの出来事です。
型が完成したらクッキングシートの上に乗せて、溶けた液体を注ぎます。さて、上手くいくでしょうか。
ブタの鼻をモチーフにした型にはピンクを。
こちらは緑色のヒトデとのこと。三原色と白を使って巧みに色を作っていました。
液体が冷めて固まったら、周りの粘土を取り除いて完成です。
異なる色同士を2回に分けて流し込み2色一体のものを作ったり、粘土のほかにお菓子づくり用の既製シリコン型を使ったりなど、盛りだくさんのワークショップとなりました。
途中で割れてしまわないよう、慎重に粘土からクレヨンを取り出します。
参加者の皆様による作品の一部。砂糖でグレーズがけをしたクッキーのようにも見えますが、もちろん立派なクレヨンです。
今後も、天王洲アイルではさまざまなアートスポットを巡るイベントを企画予定です。
都内から気軽に出かけられるアートな島で、運河の開放感を味わいながらゆったりとした時間を過ごすのはいかがでしょうか。