金属の基底材 カラーチタンパネル 

金属の基底材 カラーチタンパネル 

更新日:2024年6月8日

 

チタンという金属をご存知でしょうか。

PIGMENT TOKYOにある基底材には、紙やキャンバスなどのように一般的に使われているものだけでなく、金属である「チタン」素材もあります。

日本製鉄株式会社が開発した意匠性チタン、TranTixxii®(トランティクシー)は、チタンに「美しさを追求する」という、世界でも類例のないブランドを展開しています。


本記事ではチタンやTranTixxii®特徴と、画材として使用したときに得られる効果をご紹介いたします。



 

【チタンの特徴】

・鉄やアルミニウムよりも強度がある

・不燃性が高い

・高耐食性(半永久的に錆びない)

・外装などに用いられるほど酸性雨でも変色しにくい

・紫外線や海水への高耐性


TranTixxii®の特徴】

⚫︎豊富なカラーバリエーション

・TranTixxiiの独自技術によりチタン表面の酸化被膜を自在にコントロール

・豊富なカラーバリエーションがある


⚫︎干渉色

豊かな色調の干渉色が現れる

見る角度や天候、時間、光の移ろいによって変化


⚫︎軽量

・作品の基底材としての使用可能な重量

・耐食性が高い

・錆や腐食に強い

・長期保管も可能


カラー展開や詳細は、各商品ページにてご確認ください。

※製品により偏光する性質がございます。

※偏光する商品は、見る角度や環境により色の見え方が異なります。あらかじめご了承ください。

※チタンパネルの表面は指紋が付着しやすく一度付いてしまうと落ちにくいため、作業時は手袋の装着を推奨しております。

 

 

【サンプルに使用したカラーチタンパネル】

SD3 (Hard Color)

質感:光沢のある鏡面仕上げ

サイズ:パネル(チタン板を木製パネルに接着)F6 、F10、F15、F25

    サンプル 100mm×100mm

 

 

ND20 (Hard Color) 

質感:表面に凹凸がありマット仕様

サイズ:パネル(チタン板を木製パネルに接着)F6 、F10、F15、F25

    サンプル 100mm×100mm

 

商品の一覧はこちらをご参照ください。

カラーチタンパネル 商品一覧 

 

 

色彩豊かなカラーバリエーションも塗装ではありません。

チタンの表面に薄い酸化皮膜(無色透明)を生成させると光を干渉して色が見え、この膜厚を変えることによって、醸し出した表面仕上げです。

チタンのメリットを生かしつつ、より多様性のある金属製品として開発されたTranTixxii®は、特徴を見ただけでも「良い素材」ということがわかります。しかし、やはり実際に使った時にどのように使えるのか、気になるところです。

今回は4種の色材で試していきたいと思います。

 

 

 

 

■カラーチタンパネル × エフェクト顔料

単色でもきれいなエフェクト顔料ですが、カラーチタンパネルに塗るとどのような光輝性が現れるのでしょうか。

こちらのサンプルは、落ち着いた色彩で偏光するデュオクロムです。

 

 【使用画材】

基底材:カラーチタンサンプル ND20  (Hard Color)   #8

色材:デュオクロム RB

メディウム:アクリルエマルション

 

基底材:カラーチタン サンプル ND20(#76)

色材:デュオクロム RB

   クサカベ セルリアンブルー

メディウム:アクリルエマルション

 

双方とも上から、下記のように絵具を塗布しております。

・水分多め

・濃いめの絵具(多め)

・濃いめ絵具(少なめ)

 

 

 

デュオクロムはマイカに酸化チタンや酸化鉄が被覆したパール顔料で、偏光作用があるエフェクト顔料です。RBは白地に塗布するとピンク、黒地では青みのある輝きを放ちます。

カラーチタン #76(青系)よりも#8(ゴールド系)の方が少し赤みが強いピンクのパールカラーが現れました。


また、右の#76にはクサカベのセルリアンブルーを重ね塗りしました。画像では少しわかりにくいのですが、うっすらとデュオクロム RBも見えるので、塗り方を調整して地と図の効果をうまく利用できそうです。

カラーチタンパネル自体の色や偏光作用と、絵具の量やチタン表面の凹凸による違いなどを生かした表現の可能性を感じます。




次はゴールドとオレンジ系の情熱的な雰囲気のカラーが特徴の [Me] ヴィクトリアレッド F120-51を、光沢のある鏡面のSD3に塗布しました。

使用したカラーチタンは、鏡面仕上げのSD3  #0(シルバー)。

#0は酸化皮膜を付けていないので、干渉作用はありません。下の画像はどちらも同じものですが、見る角度による色の見え方の違いを比較します。

  

 【使用画材】

基底材:カラーチタンサンプル SD3  (Hard Color)  #8

色材:[Me] ヴィクトリアレッド F120-51

   デュオクロム RB

メディウム:アクリルエマルション

 

基底材:カラーチタンサンプル SD3  (Hard Color)  #0

色材:[Me] ヴィクトリアレッド F120-51

   デュオクロム RB

メディウム:アクリルエマルション

 

 

 

[Me] ヴィクトリアレッド F120-51は、高純度のフレーク状アルミナを基材にしたペースト状の光輝性顔料です。偏光作用はありません。

そのため偏光による違いを見るためにデュオクロム RBも塗布しました。


左のサンプルは上から光が当たり、右は少し角度をつけて撮影しました。

こちらのカラーチタンパネルは環境の違いによる影響を受けやすく、周囲の色や光が映り込みやすいため、ND20よりデュオクロムの変化を感じます。

SD3とND20で絵具の定着の仕方も異なりますので、メディウムや絵具濃度の調整、重ね塗りの有無など、表現に合わせた試作をしてみてください。


チタンパネルはアクリル絵具でも定着しますが、種類により剥がれやすい場合もあります。定着力を強めたい方は、金属・ガラス用プライマーをご使用ください。

 

 

 

 

■カラーチタンパネル × 墨

 【使用画材】

色材:大和雅墨 茜雲

基底材:カラーチタンパネル ND20(#0)

 

 

水分の多い墨は弾きやすいため、凹凸のあるND20に塗布しました。

 

薄く見える部分は1回塗り、中央付近の濃い部分は3〜4回重ね塗りをしております。数回塗ると着色されますが、鋭利なもので軽く擦ると傷が付きます。

展示や長期保管には工夫が必要ですが、その性質を利用した表現や加工ができそうです。

 

 

 

■カラーチタンパネル × 油性アルキド樹脂絵具 Pebeo

 

 【使用画材】

基底材:カラーチタンサンプル ND20  (Hard Color)  #58

色材:油性アルキド樹脂絵具 Pebeo

    プリズム パールバイオライン No,25 / バーミリオン No,12

 

基底材:カラーチタンサンプル ND20  (Hard Color)  #88

色材:油性アルキド樹脂絵具 Pebeo

    プリズム パールバイオライン No,25/バーミリオン No,12

    ヴィトラーユ スカイブルー No,36

 

 

 【使用画材】

基底材:カラーチタンサンプル SD3(#48)

色材:油性アルキド樹脂絵具 Pebeo

    プリズム バーミリオン No,12



色材としての個性も強い、油性アルキド樹脂絵具Pebeo。

キャンバス、紙、ガラス、金属などに描くことができ、艶のある仕上がりが得られる油性の溶剤系絵具です。

ヴィトラーユは透明度が高く、単色でも美しい絵具です。

一方、プリズムは不透明で、絵具が乾燥するにつれて「ハチの巣」模様のような効果が現れます。どちらも艶があり、混色可能な色材です。

油性で光沢があり、塗膜のような仕上がりになります。

 

今回は筆ではなく、ペンチングナイフやボトルからそのまま流し込み、塗布したので色面にかなり厚みがありましたが、ND20とSD3のどちらも表面は約半日ほどで乾きました。

塗布したパネルを重ねて移動した際も、剥落せず、しっかりと定着しました。

 

 

 

 

 

ご紹介した組み合わせはほんの一例ですが、新たな発見のヒントにお役立てください。

基底材として表現の幅を広げる大きな可能性のあるカラーチタンパネル。みなさまの感性のスパイスとして、いかがでしょうか。





こちらの記事で、TranTixxii®の開発秘話について特集しております。

【ARTICLES】TranTixxii®開発秘話インタビュー

 

 

 

 

日本製鉄株式会社

TranTixxii®(トランティクシー)

ブランドサイト  https://www.nipponsteel.com/product/trantixxii/

Profile

白石 奈都子

PIGMENT TOKYO 画材エキスパート

白石 奈都子

多摩美術大学染織デザイン専攻卒業。オリジナルの紙や和紙、書を主体とした制作に携わり、現在はアーティストとして活動中。

多摩美術大学染織デザイン専攻卒業。オリジナルの紙や和紙、書を主体とした制作に携わり、現在はアーティストとして活動中。