私たち人類と顔料の関係は紀元前から続くと、他の特集記事でもいく度となくご紹介してきましたが、その顔料の始祖ともいえる色材に土絵具というものがあります。
歴史的に名高いフランスのラスコーにある洞窟壁画も、先史時代と言われる頃に土絵具や木炭、血液などを使って描かれました。
今回は、世界各国の土から作られた色に焦点をあてます。
◾️土絵具
PIGMENT TOKYOには、50色の土絵具があります。
その原料となる土の名前を見ると日本だけではなく、中国、ロシア、イギリス、ドイツ、イタリア、ギリシャ、チェコ、フランス、モロッコなどおよそ10ヶ国の地名が見られます。見ているだけでも、その大地の色を想像し、まるでその地を訪れたような気持ちになります。
土絵具の作り方は水干絵具と同じです。土を水で精製し干し上げ、板状にして自然乾燥させて作られます。種類により異なりますが、硬いものが多いです。そのため、よくすり潰してからメディウムを入れて絵具にします。
今回は、その中から4種の土絵具を塗り比べてみます。
【使用画材】
色材:伊太利亜弁柄(イタリア べんがら)
メディウム:ガムアラビック 水彩メディウム
基底材:竹和紙 水彩画用
土絵具の中でも、日本に住む方には馴染みのある弁柄。神社の鳥居などの朱色の塗料はこちらが使われており、成分に酸化鉄を含んでいます。
見た目は茶色ですが、塗ってみると少し茶を帯びたある落ち着いた朱色が現れます。
また、赤系の土絵具は、弁柄以外に代赭(たいしゃ)という種類があります。
【使用画材】
色材:モロッコ黄土
メディウム:ガムアラビック 水彩メディウム
基底材:竹和紙 水彩画用
黄色系は種類が多く、淡色から赤みのある黄色までバリエーション豊かです。モロッコ黄土も固形の状態では少し淡い色合いですが、濡れ色になると少し赤みを帯び深みが出ます。
【使用画材】
色材:ボヘミア緑土
メディウム:ガムアラビック 水彩メディウム
基底材:竹和紙 水彩画用
土絵具の中でも緑色は、ボヘミア緑土とロシア、イタリア緑土の3種類のみです。同じ緑土でも採掘場所が異なると、色味も違うところが土絵具の面白いところです。
また、土により絵具の濃度も異なるので、それぞれの特性や表現に合わせてメディウムの量を調整してください。
※ロシア緑土...こちらの商品は販売を終了いたしました。
【使用画材】
色材:独逸銀鼠(ドイツ ぎんねずみ)
メディウム:ガムアラビック 水彩メディウム
基底材:竹和紙 水彩画用
白系の土は、他にも日本や中国など複数有ります。独逸銀鼠は、少し青味のあるアッシュ系の色味です。それ以外には茶系のもの、黄味があるものなどもございますので、お好みの色をお選びください。
こちらは、同じ独逸銀鼠ですが、黒い紙に塗布しました。
同じ絵具でも、黒地に塗布すると、色の見え方も変化します。
下地や基底材色や素材感の効果を取り入れたり、メディウムによっても色味や艶の出方も変わります。ぜひ色々とお試しください。
【使用画材】
色材:独逸銀鼠(ドイツ ぎんねずみ)
メディウム:ガムアラビック 水彩メディウム
基底材:黒鳥の子紙
土絵具は水干絵具と比べて硬いものも多く、ダマが残りやすいです。そのため、滑らかな絵具を作る際は、乳鉢やマーラーを使ってよくすり潰すか、折った紙に顔料を挟んで紙の上から棒を転がすなど、細粉状にしてからメディウムと混ぜてください。
定着力に留意が必要ですが、あえて粒子の粗細の違いを出した表現も可能です。
こちらのInstagramのLIVEでもご紹介しております。
◾️Instagram【IGTV】Earth pigments / 土絵具
https://www.instagram.com/tv/CU9kjKtIcoj/
多彩な表情を見せてくれる大地の色。色だけでなくその色彩が生まれた風土、名前など、土絵具から生まれるインスピレーションが映しだすものは、どんな色が表現されるのでしょうか。