ZECCHIのプライヤーでフローティングキャンバスを張ってみよう

ZECCHIのプライヤーでフローティングキャンバスを張ってみよう

一般的に麻のキャンバスはタックスとよばれる短い釘を、木製のフレームに側面で固定します。他にも、今日では保存性の観点からアルミ製のフレームを用いたり、パネルにメディウムで貼り付ける方法が取られる場合もあります。ただ前者の場合は素材が高価で、後者の場合はプロセスが多い上に1枚あたりの重量が重くなってしまうなどという理由から、木製のフレームを用いるケースが多いです。

また、既に木枠へ張られたキャンバスを販売している画材店もあります。これらを中学や高校の美術の授業で使ったことがある、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、このタックスを用いた張り方にもちょっとしたデメリットがあります。しかし、このタックスを用いた張り方にもちょっとしたデメリットがあります。

 

タックスを用いた張り込みの場合、側面に打った釘が見えてしまいます。習作のときや、額装をする場合はこのままでも良いのですが、そのまま壁にかけると少し不格好ですし、側面まで綺麗に絵具を塗ることができません。

そこで必要になってくるのが、包み張りというキャンバスの張り方です。画布で木枠を包み込むようにしたのち、この写真のように裏側で固定することで布の張り具合を保ちます。

 

 

この作業で必要な道具と画材は以下のものになります。

 

・カットキャンバス
・木枠
・キャンバス張り器(プライヤー)
・ガンタッカー
・ガンタッカー用の針
・鉛筆(B以上)
・定規
・カッターナイフ

 

カットキャンバスは張り込む木枠より数サイズほど大きいものを用意してください。例えば今回の記事ではF10号の木枠を張るために、F15号用のカットキャンバスを用意しました。

木枠の厚みによっても変化しますが、一般的な木枠の場合、周囲に75mmから100mm程度のマージンが取れれば使用できます。

ガンタッカーとは建築用の大きなホチキスのような工具で、カーペットなど厚手の生地を壁面や床に固定する際に使用されます。片手で操作が可能なため、キャンバスを張る作業の時は便利です。

 

キャンバス張り器は、ZECCHIのキャンバスプライヤーがおすすめです。

 

 

Zecchi キャンバスプライヤー  小/大 

 

 



こちらの商品は大と小の2種類を展開しており、大きい方は口巾が115mmで、全長 が420mm。小さい方は口巾が65mmで、全長は240mmです。F30号程度のサイズでしたら小さい方を、それ以上のサイズの場合は大きい方を使用してください。

 

プライヤーを開いた様子がこちらです。下部の持ち手で締まった状態でのロックも可能なため、手が小さい方や力の弱い人でも簡単に布を引っ張ることができます。

 

 

 

①採寸とカット

キャンバスの中心に木枠を置き、裏側で固定できる程度のマージンを取りつつキャンバスをカットします。描画する面を汚さないよう、キャンバスと木枠は裏面を上にしてください。

マルオカのA木枠の場合、木枠の外側から周囲に75mmずつ残すようにしました。もちろん、木枠が大きくなればこの数字は変化します。

多く残しすぎるとキャンバスを張る時に邪魔になり、少ないと木枠に届かない場合があるため、使用される木枠のサイズをしっかり測ってからサイズの調整をしてください。


②下書きと位置決め

木枠の外周面(外側面)に沿わせて線を引き、長辺・短辺の各線を伸長し、交差させます。伸長線はキャンバスの端までひいてください。

キャンバスの隅を木枠の角に対し垂直に折り返した時に、木枠裏面の角とキャンバスの接点よりやや外側に印をつけてください。

このとき、木枠の高さより低い所で印をつけてしまうと、適切なマージンが取れなくなり、最後の側面のキャンバスを折り込む作業の時にフレームが見えてしまうので、側面までキャンバスがあるメリットがありません。少し余裕を持たせて位置決めをすると良いでしょう。

 

 

印をつけたところから、辺の各線を伸張した線とキャンバスの端との接点に向けて曲線を描きます。その後、円の内側をカットします。こうすることで、仕上がりの際に木枠の四隅に布が重なりすぎて厚くなってしまうことを防ぎます。

 

③中心部からの張り込み

②の印からずれないように、ガンタッカーとプライヤーでキャンバスを固定します。一方向に力が偏らないよう、下の写真のように対角線で固定をしていきます。こちらの画像では6番目までしか記載しておりませんが、完全に張り終えるまで常に対角線上の位置を維持しながら固定してください。

 

 

生地を伸ばす時は、このように木枠の側面へテンションをかけて張ります。このプライヤーは挟む部分の上部と下部に厚みがあるため、作業を進めやすいです。

 

 

④側面の折り込み

キャンバスの張り方に偏りがないか、表面のテンションをチェックしながら作業を進めます。ある程度のところまで進んだら、キャンバスを折り込む面を決め、先に簡単な折り癖をつけておきます。木枠の側面に接した直角三角形を作るようなイメージで、キャンバスを折り込みます。

 

 

仕上げのパートに入ります。折り目がない辺を先にタッカーで固定します。このように角をカッターナイフで切ると、四隅も綺麗に張ることができます。

 

 

⑤完成
四隅を固定して、全体的に適度な張りを得られたら完成です。

 

 

まだ張りが弱い時や、シワが入ってしまった場合は、一度タッカーを抜いて、再度固定をしてください。

 

 

側面でタックスを打つ場合と比べると、力の入れ具合を調整する必要や、綺麗に張るのが大変な作業ではあります。ただ、このやり方をすることで、側面に着彩をしたり、額なしで展示ができたりと、通常の張り方ではできない表現が可能となります。
何度か習作用のキャンバスと木枠で練習をすれば慣れてくる作業ですので、ぜひ挑戦してみてください。

 

大矢 享

PIGMENT TOKYO 画材エキスパート

大矢 享

1989年東京生まれ。 日本大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻博士前期課程修了。 PIGMENTにて画材エキスパートとして携わりながら、平面作品を中心にアーティスト活動中。

1989年東京生まれ。 日本大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻博士前期課程修了。 PIGMENTにて画材エキスパートとして携わりながら、平面作品を中心にアーティスト活動中。