顔料+メディウム=絵具?

顔料+メディウム=絵具?

油絵具、アクリル絵具、水彩絵具などなど。

画材店ではチューブに入った様々な絵具が売られています。

皆さんはこれら絵具の違いをご存じでしょうか?



実はチューブ入り絵具も含めて、全ての絵具は基本的に”顔料とメディウム”の組み合わせから作られています。

顔料というのは、当ラボに並んでいる瓶に入った色たちの総称。

岩絵具も、水干絵具も、ピグメントも、キラキラとしたエフェクト顔料も、全て同じ仲間です。

「同じ顔料を使っているのに何で色々な絵具の名前があるの?」と思う方もいらっしゃるでしょう。

実は絵具の種類を決めるのは顔料ではなく、その顔料を何で混ぜたか。つまり、どんなメディウム(糊材)を使っているかで決まるんです。

つまり、油がメディウムであれば油絵具、アクリルエマルションであればアクリル絵具、アラビアゴムの場合は透明水彩となります。

メディウムの種類は大きく分けて水系と油系の二種類があります。今回はビギナーの方にでも簡単に使える絵具をご紹介いたします。「これなら自分でも使えそうだな」という絵具がありましたら、ぜひ試してみてくださいね。



①日本画用絵具(岩絵具+膠)



岩絵具+膠という組み合わせは、主に日本絵画・日本画で用いられます。

便宜上、冒頭では「日本画用絵具」と表記しておりますが、一般的に粉の岩絵具と膠と混ぜた絵具の状態の物も同じく「岩絵具」と呼びます。(中国では”岩彩”とも呼ぶそうです。)

この膠を用いた表現の一番のメリットは、他のメディウムと比べて顔料の色そのままで絵具が乾燥すること。また、岩絵具は同じ色でも粒子ごとに10段階以上もの種類があり、その名の通り砕いた鉱物の質感を表現することに長けています。

メディウムの都合上、チューブ入り絵具を作ることが難しく、描く度に使いたい分量を絵皿の上で作りながら制作を進めていくことが求められます。




岩絵具の詳細な使い方をこちらで紹介しておりますので、併せてご覧ください。






②アクリル絵具(ピグメント+アクリルエマルション)




チューブ絵具を使ったり、自分で顔料と練り合わせてカスタムしたりと、お手軽な方法から自分好みの絵具作りまで、調整の幅が広いのがこのアクリル絵具です。

この絵具の一番のメリットは、乾燥すると完全耐水性になること。その上から重ね塗りをするのはもちろん、各種メディウムを追加して盛り上げたり、透明度をあげたりなど、多種多様な表現をすることができます。

手芸やプラモデルなど、ホビー用途にもおすすめの絵具です。




自分で練ってみたいという方には、こちらの動画もおすすめです。






③透明水彩(ピグメント+アラビアゴム)




チューブ絵具、パンケーキ、自作の絵具など、形状の種類が多いのがこの水彩絵具の特徴。その秘密は乾いても耐水にならず、再び水に溶ける性質にあります。

そのため、一度色を塗り、上から水を垂らして滲ませるなど、水彩絵具特有の絵画表現を行うことができます。

また、重ね塗りも可能ではありますが、前述の通り耐水性はありませんので、下の色と混ざった場合どのような風合いになるのかを想像しながら絵を描いていく必要もある素材です。






④油絵具(ピグメント+油絵具用メディウム)




こちらもアクリル絵具同様、チューブ状のものを使ったり、自分でカスタムしたりと、調整の幅が広い絵具です。

ただ、非常に乾くのが遅く、絵具を薄めたり筆を洗ったりする際に溶剤を使用するため、制作にあたっては室内の換気が必須となります。

油絵具の一番のメリットといえば、アクリル絵具にも負けないほどの表現の幅の広さにあるでしょう。また、水系の絵具と異なり、空気中の酸素と結合して重合することで絵具が固まるため、指触乾燥でも1週間程度の時間を要します。

その代わり、ゆったりと作品と向き合って制作を進めることができます。

また、豚毛の筆を用いて、気の赴くままに厚塗りで筆を走らせるのはもちろん、絵具の乾燥時間と吸油具合を計算しながら描き進めたり、下地に水系の絵具を使用して薄塗りで色の層を重ねていったりと、様々な表現が可能です。




油絵具を自分で作ってみたい、という方にはこちらのメディウムがおすすめです。

大矢 享

PIGMENT TOKYO 画材エキスパート

大矢 享

1989年東京生まれ。 日本大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻博士前期課程修了。 PIGMENTにて画材エキスパートとして携わりながら、平面作品を中心にアーティスト活動中。

1989年東京生まれ。 日本大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻博士前期課程修了。 PIGMENTにて画材エキスパートとして携わりながら、平面作品を中心にアーティスト活動中。