更新日:2024年7月4日
金属を用いた装飾は古より世界で重宝され、多くの美術品をきらびやかに荘厳します。その輝きは人々を魅了し、時には永遠性を唱えることもありました。
貴重で重量のある金属は、加工しやすいように金属を叩いて薄く延ばした「箔」にして、立体から平面まで多様に使われ、日本でも装飾品や寺院建築、仏像、絵画、調度品など用途や表現に応じ独自の加工や技術用法を築いてきました。
金、銀、銅、錫やアルミ、プラチナといった金属素材そのものの箔だけでなく、合金や近代では銀箔に色を付け多彩な色数を有する新光箔など、箔の種類も時代の変化に合わせて進化し、私たちの生活の中にさりげなく輝きを添えています。
箔を施した商品や作品は身近にありながらも、その工程を学ぶ場に出会う機会は少ないかもしれません。PIGMENT TOKYOでは、初心者の方が日本の箔技法を座学と実技で学べるワークショップを定期的に開催しております。
今回は、箔の入門講座についてご紹介いたします。
[入門]箔で夜空をつくる(90分)
日程:毎月1回/日曜日
※回数や曜日が変更することもございます。日程の詳細はご予約ページにてご確認ください。
時間:14:00-15:30
場所:PIGMENT TOKYO
受講料:一般 ¥6,600 (税込・材料費込)
年齢制限:推奨5歳以上
ご予約:https://pigment.tokyo/collections/workshop
お持ち物:なし
<チケットオプション(ご希望の方はご選択ください)>
◾️保護者同席(1名様):無料
椅子を追加で1席ご用意いたします。
※数に限りがございます。
※受講1名様に対し、ご同席は1名様までとなります。
※材料は含まれません(制作のお手伝いは可能です)。
◾️その他
※ 講座内では、動物性の接着剤である膠(にかわ)を使用します。代替品としてアラビアゴム(樹液)をご用意しておりますので、ご希望の方は講師へお声がけください。
金属の加工品は数多くありますが、箔はとても薄く、また素手で触れることができないので扱いが難しい画材のひとつです。また、箔の特性に合わせた専用の道具は使用方法やメンテナンスの知識も必要な物も多く、興味があってもすぐに始めにくい技法かもしれません。
しかしながら、そのハードルを超えた箔ならではの美しさは、掛け替えのない表現に結びつくのではないでしょうか。
本講座は、はじめて箔に触れる方に向けた入門講座です。古典的技法と現代の簡易的な箔貼りの技法を習得いただけます。
また、道具も全てご用意いたしますので、ご準備いただくものはございません。
日本で受け継がれてきた平押し、あかうつし、砂子、切箔といった古典的技法と現代の簡易的な箔貼りを体験しながら、箔の技法が詰まったA5サイズの作品を制作いたします。
年齢やアートの制作経験は問いませんので、日本の画材や技術にご興味のある方やご自身のフィールドを広げたいアーティストなど、どなたでもご参加いただけます。
専門用語や特殊な道具も用いますが、PIGMENT TOKYOの画材エキスパートが座学とデモンストレーションを交えながらわかりやすくご説明いたしますので、安心してお越しください。
それでは、ワークショップの詳細をご覧ください。
ワークショップスペース風景
◾️箔技法:平押しの準備 14:00-14:10(約10分)
さっそく、制作からスタートです。最初に構図を考えます。
箔の技法に集中して制作することができるよう、満月と、稜線に立つ人を象ったシルエット型のモールドを各自にご用意しております。和紙ボードをたて、よこ、自由に構成し、思いのままイメージをふくらませてださい。
モールドを配置するだけでも作品制作ができ、型の位置や砂子の撒き方で個性を出すことも可能ですので、ご自身の表現に合わせてアレンジしてください。
なお、本講座では、特性の異なる2種類の箔下糊(糊剤)を用い、3つの技法を学びます。
日本の伝統的な箔押し技法に用いる「膠溶液」と、現代の箔下糊「アクアミッショーネ」を使い、箔押しを体験していただきます。
最もベーシックな日本の箔押し技法、平押しから始めます。
平押しとは、箔を平面に貼る技法のことです。
講座では、アクアミッショーネを使用した平押しを体験していただきます。
構図が決まったら、平押しをする部分に箔下糊を塗ります。
アクアミッショーネは平押しだけでなく、膠では接着が難しい様々な素材や形状のものにも使用できます。
また、アクリル樹脂でできているので粘性が強く、表面が乾いても長時間粘着質が残ります。そのため、ゆっくり作業が行えるので初心者の方や細かい作業に向いています。
異なる箔下糊を使うことで、それぞれの良さを知っていただけるでしょう。
◾️講義 14:10-14:25(約15分)
和紙ボードに塗布したアクアミッショーネが平押しに適した状態になるまで、道具や画材のご説明をいたします。
こちらのワークショップでは、日本で使われてきた伝統的な箔の道具と共に、難易度の高い技術を楽しくカジュアルに体験していただけるように応用した道具も使います。
◾️箔技法:平押し・切箔・砂子 14:25-15:30(約65分)
使用する箔は、洋金箔の赤口とアルミ箔。
洋金箔の赤口は、真鍮と亜鉛の合金で金箔の代用品として使われます。
一方、アルミ箔は銀箔よりも変色がしにくい、という利点があります。
どちらも趣のある落ち着いた輝きを放ちます。
箔を貼る準備をします。
箔はとても薄く、わずかな風でも飛んでしまうため、箔を貼る間は作業環境を整えて行います。
加えて、箔は素手で触ると手に付いてしまうので、日本では竹製の箔箸や「あかうつし」という方法で移動させます。
箔をあかしている様子
箔をあかします。
こちらの講座では、ワックスペーパー製のあかうつし紙を使用します。
あかす作業は、革製の箔台の上で行うことでスムーズに行えます。箔の上にあかうつし紙を乗せ、箔箸を水平に滑らせて、箔とあかうつし紙を密着させます。
あかしたアルミ箔を貼る様子
扱いが難しい箔も、あかすことで容易に手で持てるようになりました。
なお、箔を対角線状に持つことが、綺麗な平押しに繋がるポイントです。
このような細かいポイントも講師が実践しながらご説明いたします。わからないことがあれば、お気軽にお声かけください。
箔を平押します。
アクアミッショーネを塗布した所にあかしたアルミ箔を乗せ、脱脂綿を使い軽く押さえます。この時に強く擦ると繊細な箔がよれてしまうこともあるので、優しく撫ぜます。
画像左:切箔の作成風景
画像右:筆の穂先で膠を塗りながら切箔を貼る様子
続いて、切箔(きりはく)を行います。
切箔とは、細かく切った箔で文様を施す技法です。
講座ではパンチで丸い箔を作り、星や遠くの惑星を表現します。
パンチで切り抜いた箔は、水を付けた筆の穂先で拾います。片手に膠を付けた筆、もう片方には箔を付けた筆を持ち、二刀流で箔押しします。
画像左:平押しと切箔で貼ったアルミ箔
画像右:平押しの余分な箔を落としている様子
膠溶液は乾きやすいので、すぐに切った箔を置きます。
膠が乾いたら、固着していない平押しの余分な箔をそっと落とします。
細かい作業が続きますが、一度に数種の箔の技法を体験できるワークショップは、PIGMENT TOKYOならではかもしれません。
最後に、砂子で装飾します。
細かい箔のことを「砂子(すなご)」と呼び、糊剤を塗布したところに細かい箔を撒く技法です。
人と稜線のシルエット型を好きな位置に配置し、砂子の星を撒く部分を決めます。
こちらの講座では、初めての方でも扱いやすい、竹筒に網が張られた砂子筒という道具を使います。
筒の中に箔を入れ、鹿毛でできたタタキ棒という硬い穂でこすり、砂子を撒きます。砂子の精粗は、網目のサイズにより変わります。
砂子の糊剤には、箔押しに適した濃度に希釈した膠溶液を使います。
膠は乾くと基底材の表面に粘性がなくなるので、砂子のように無作為に糊材を塗布し、細かいものを散布する場合に適しています。
砂子に疎密をつくることで、輝きにも変化が生まれます。
暮れかかる闇に微かに光る星や、満天の星空など、イメージに合わせて表現してください。
砂子を撒いただけでは、まだ箔が接着していません。
和紙で軽く押さえ、砂子の定着を促します。
黒い和紙に、小さな夜空が広がりました。
柔らかい光がゆらめく、金属箔だけで描いた作品のできあがりです。
伝統的な技法を学び、制作だけに打ち込める贅沢な休日はいかがでしょうか。日本の文化を知る好機にワークショップをぜひご活用ください。
PIGMENT TOKYO ワークショップ
日程:
[入門]箔で夜空をつくる(月1回/日曜日)
[入門]岩絵具で花をえがく(月1回/日曜日)
[入門]水剤絵具づくり(月2回/日曜日)
時間:各講座 14:00–15:30
ご予約:https://pigment.tokyo/collections/workshop
※回数や曜日が変更することもございます。詳細は各講座のご予約ページよりご覧ください。