自然由来の色でつくるキャンドル

自然由来の色でつくるキャンドル

PIGMENT TOKYOの4500色にも及ぶ色材は、それぞれ多様な種類の原料で作られています。その中でも、天然の染料をベースとした顔料という少し特殊な商品が存在します。これらの顔料をピグメントと比較すると、耐光性が弱く保存性の観点では劣る面もあるのですが、彩度が低く柔らかな風合いが特徴です。今回はそのような顔料や自然由来の色素を使用してキャンドルを作成してみました。

まずは使用した色材のご紹介です。 コチニールとは染料の一種で、サボテンにつくカイガラムシ(エンジムシ)という虫を乾燥させたものです。当ラボではゼッキとシュミンケのコチニールを取り扱いしております。

ゼッキ コチニールカーマイン エクストラ

コチニールレッド

 

インド藍(インジコ)とはダテ科の一年草で、葉や茎の部分が染料として用いられます。原産地は中国南部、またはインドシナ半島とされ、日本には中国大陸を経て飛鳥時代(592〜710年)にはすでに伝わっていたようです。 今日では合成染料で染めることが増えてきたジーンズも、元々はこの藍を使用していました。もちろん、当ラボ取扱いの色材は染料を顔料化しておりますので、染め物に使用することはできません。

ナカガワ胡粉 インド藍

 

次に今回使用した画材と道具のご紹介です。

 

 

・キャンドル用ワックス
・色材
・なべ
・ビーカー
・紙コップ(型)
・空ビン
・芯糸
・割り箸などのスティック状の木材(芯糸固定用)
・薬さじ
・ガラス棒
・IHヒーター
(※)火気を使用する場合は火傷に気をつけて作業をしてください。


ロウソクにエフェクト顔料を混ぜた場合、どのような効果が得られるのかをテストするために、メタシャイン シルバーコート MC5090PSとイリオジン153フラッシュパールも使用しました。これらは両者ともシルバー系のエフェクト顔料なのですが、前者のシルバコートMC5090PSは粒が大きく反射の強い顔料で、後者は一粒が小さくサラサラとしています。一般的なピグメントとエフェクト顔料、混ざり方にどのような差が出るのでしょうか。

メタシャイン シルバーコート MC5090PS

イリオジン 153 フラッシュ パール

 

①ワックスを湯煎し、顔料を添加する。

まず初めに、ワックスを湯煎します。今回は複数個作って色の差を観察したかったため、400g用意しました。
顔料も複数混ぜることから、直火に当たらないようにビーカーで湯煎をしました。
ワックスの種類にもよりますが、概ね50℃から60℃が融点です。ただ温度が低すぎると綺麗な形にならない場合もありますので、70℃から75℃程度を目安に加熱をしてください。

そして顔料を添加します。色材によって添加する量は変化しますので、少量を添加しながら適宜かき混ぜて、様子をみながら作業を進めてください。今回はインド藍とコチニール、両方とも薬さじで軽く1杯程度の量で着色できました。

 

ナカガワ胡粉のインド藍を混ぜてみます。

 

想像以上に黒に近い色になりました。

 

食品添加物としても用いられるコチニールは、ワックスと混ぜると鮮やかな赤色になりました。

 

②ワックスを型に流し込む

芯を固定する木に当たらないよう、慎重にワックスを型(紙コップ)に流し込みます。
室温にて1〜2時間程度で固まりますので、特に色を重ねたい場合は完全に固形化してから次の色を入れてください。

顔料が入っていた小さな瓶を使って、ミニキャンドルを作りました。

 

コチニールで着色したワックスを紙コップに入れた様子。一番下にインド藍のキャンドルが重なっています。

 

③完成

周りの紙コップをカッターで切り、取り除いたら完成です。
こちらのキャンドルは、下からインド藍、コチニール、そしてイリオジン153フラッシュパール単体の3色で構成されています。
インド藍は顔料瓶でみた時よりも暗くなったものの、コチニールは鮮やかさをキープしたままとなりました。エフェクト顔料は多くが下部に沈殿してしまい、キラキラとした効果を得ることができませんでした。
事前に油系のメディウムと顔料を混ぜたペーストを作ったり、顔料と混ぜて固めたキャンドルを粉砕して添加することで、こうした現象は回避できるかと思われます。

 

 

こちらは下部がインド藍とシルバーコート MC5090PSの混色、上部がコチニールと153フラッシュパールの混色です。両者ともエフェクト顔料の影響で明度は上がっているものの、シルバーコートMC5090PSはあまり大きな影響があるように見えませんでした。153フラッシュパールは単体で使用するよりも、このように顔料と混ぜることで視覚的な変化を与えることができました。

 

 

番外編として、当ラボ取扱いの色材の中で、唯一食用可能な色材、リナブルーを使ってキャンドルを作ってみました。

DICライフテック リナブルー(スピルリナ色素)

 

リナブルーは日本・韓国・台湾に加え、米国・欧州の規格にも準拠した植物生まれの色素です。管理培養したDICスピルリナに含まれる青色の色素「フィコシアニン」を商品化した、鮮やかな食品用の青色着色料です。また、各種メディウムと混ぜて頂ければ絵具としてご使用できます。
ただし、こちらの顔料は耐光性が高くないため、光を当て続けると退色してしまう可能性があり、恒久的に設置する作品のための色材には適しておりません。
耐熱性も低いので退色の可能性があるとのこと。キャンドル作りの熱の場合はどのように変化するのか見てみましょう。

こちらが絵皿に出した状態のリナブルーです。一見すると通常の青系ピグメントと遜色ない見た目をしています。着色料においては、青色1号に最もよく似た色です。

 

 

溶けたワックスに入れた状態がこちらです。
最初は鮮やかな青を保っていたのですが、熱するごとに徐々に青味が薄まっていくように感じました。また、ワックスと顔料が綺麗に分散しづらく、攪拌に時間を要しました。

 

 

そして完成したものがこちらです。
上部がリナブルー、下部がインド藍とシルバーコート MC5090PSを混ぜたものです。
先ほどこちらの記事でもご紹介したように、エフェクト顔料は下に沈殿しやすく、インド藍と混ざることでグラデーションのような色味を作ることができました。
リナブルーも顔料が沈殿してしまったのか、下部へいくにつれて青の色味が強くなっています。

 

 

ワックスの温度が100℃未満であったと仮定すると、リナブルーは短い時間である程度の温度を加えても完全に退色しないということがわかりました。ただ、これらは筆者が記事執筆のためにテストした情報ですので、実際に使われる場合はご自身で実験をしてからご利用ください。

 

今回は人体に害が少ないとされる色材でキャンドル作りをしましたが、例えば重金属を含む顔料は加熱に適しておらず、これらを熱する有毒な煙が発生する場合もございます。
実際に製作する場合は、このような点にもお気をつけください。
自然から生まれた色を、ぜひお楽しみください。

Profile

大矢 享

Art Materials Expert at PIGMENT TOKYO

AKIRA OYA

Born in 1989 in Tokyo. Master of Fine Art and Design at Nihon University College of Art. While working at PIGMENT TOKYO as an Art Materials Expert, he also continues his career as a visual artist.

Born in 1989 in Tokyo. Master of Fine Art and Design at Nihon University College of Art. While working at PIGMENT TOKYO as an Art Materials Expert, he also continues his career as a visual artist.