みなさまご存知の通り、PIGMENT TOKYOでは古今東西のさまざまな顔料を取り揃えております。
それは鉱石などを砕いた色の粉にはじまり、水干と呼ばれる胡粉に顔料で着色したフレーク状の顔料、ピグメントと呼ばれる粒子が細かくビビットな色など一言に顔料と言っても多様な形状があります。
さらに、顔料には赤、青、黄、など教材用の絵具のようにシンプルな色名はついておらず、中には一風変わった名前のものも。
今回はいつもと少し志向を変えて、「初夏」をテーマにいくつかの青い顔料をピックアップしてみました。
以下の写真が本日ご紹介する「青色」です。さて、それぞれにどんな色名がついているのでしょうか。
左の色から順番にご紹介します。
・天然 群青
岩絵具のなかでポピュラーな色のひとつである群青は、古今東西で用いられていました。
ラピスラズリから精製されるウルトラマリンや、カオリナイトから作られる合成のウルトラマリンも「群青」と言うこともあるため、藍銅鉱(アズライト)を用いた天然の群青を「岩群青」と呼ぶ場合もあります。
特性として色名に番号が振られており、この番号が大きくなれば粒子が細かくなり、反射率が変わるため色も白みがかり明るくなります。
こうした変化を楽しむことができるのは、岩絵具ならではの楽しみです。
アラビアゴムやアクリルエマルションをバインダーに用いる場合は、11番以上の細かい番手のものを使用するのをおすすめいたします。
粒の径が大きいものになると、岩絵具の質感が強く出てしまうため、他の絵具や顔料との併用が難しくなるためです。
岩絵具特有のザラザラとした表現を試してみたい方は、11番以下のものでも良いかもしれません。
当ラボでは店頭で等級別の群青もご用意しております。オンラインでご利用になりたい方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
・吉祥 水浅葱
こちらも同じく日本画で使われる岩絵具です。
ただ、上記で取り上げた天然顔料とは異なり、人工的に作られた鉛ガラスの塊を原料としており、これらを新岩絵具と呼びます。
新岩絵具の特徴はなによりその発色。天然の鉱物にはない色の幅をもっており、彩度の高い絵画表現も可能となります。
色名にも使われている「浅葱(あさぎ)」は薄いネギの葉の色を意味する言葉。緑がかった薄い藍色、または水色を意味します。
こちらも上に同じく、アラビアゴムやアクリルエマルションをバインダーに用いる場合は、細かい粒子のものが良いでしょう。
番手が細かくなるほど色の明度が上がっていくのがわかります
・水干 淡群青
岩絵具や新岩絵具と異なり、フレーク状になっているこちらの顔料は、イタボガキを原料とする白い顔料の胡粉に色をつけて、乾燥させたものです。
そのため、名前こそ和名がつけられているもの、岩絵具や新岩絵具とは全く別の性質をもっています。
粒子が非常に細かいため、水干絵具同士での混色が可能なのはもちろんのこと、岩絵具に比べて安価で均一に塗ることができるので、大画面での下塗りなどにも多く使用されます。
バインダーと練り合わせやすくするために、乳鉢を使用して顔料を細かくしてからご使用ください。
水干の顔料瓶を上から覗いた様子
・プルシャンブルー
こちらはピグメントと呼ばれる種類のもので、今までご紹介した顔料と異なり、番手は存在せず、水干のように乳鉢で細かくする作業などが不要です。
アクリルエマルションや油系メディウムと混ぜる目的で作られた商品ですが、もちろん膠と混ぜて日本画を描く時にも使用可能です。
このプルシャンブルーは和名でベロ藍とも呼ばれ、1700年代のヨーロッパで発見されたのち、本邦では江戸時代に輸入されました。
葛飾北斎が版画作品に用いたことから、北斎ブルーという愛称でも親しまれています。
顔料そのものの明度は高くないもの、水で薄めたり白と混ぜても強く発色するため、使いすぎには少々注意が必要な顔料でもあります。
当ラボではクサカベの他に、松田、ホルベイン、シュミンケ、ZECCHIのプルシャンブルーを取扱っております。
気になる色はありましたか?
このように季節はもちろん、服やアクセサリーを選ぶような感覚で顔料を選んでみるというのも、ひとつの選択肢かもしれません。
透明水彩絵具を作る際はこちらの記事をご参考になさってください。
「自分でつくる透明水彩絵具」
https://pigment.tokyo/blogs/article/95
また、こちらの記事で顔料ペーストを使ったアクリル絵具の作り方をご紹介しております。
「自分だけのアクリル絵具を作ってみよう」
https://pigment.tokyo/blogs/article/109
専門家にアドバイスをもらいたいという方には、当ラボの絵具作りワークショップもオススメです。
以下のリンクより「[入門]水彩絵具づくり」をお選びください。