アーティストとしても活動するPIGMENT画材エキスパートに、お気に入りの画材をインタビューする「私のおすすめ」シリーズ。
前回の芹澤マルガリータさんに続き、今回は同じくInstagramのライブ動画にも出演している岡野敦美さんの特集です。
カリフォルニア州でペインティングを学んでいたという岡野さん。普段どのような画材を使って作品を使っているのでしょうか。早速質問してみましょう。
ーどのようなコンセプトで作品を制作されているのでしょうか。
自然現象……といったらいいんでしょうか。地面に映る葉っぱの影が揺れる様子や、水面に反射する陽の光を見ていると、それが自分の中にちらちらと響いてくるような感覚が沸き起こることがあります。
私は日常の中の光や色、その残像によって起こる感覚を、色のレイヤーとしてキャンバスに落とし込んでいます。色のグラデーションそのものが時間のあらわれのように思いますので、ゆっくりと乾いて、絵肌に馴染んでいく油絵具は、その過程の変化そのものが面白いです。
ーどういう経緯で油絵を始められたのですか?
アメリカに留学した当初は写真を専攻しようと思ったのですが、自分の頭の中にだけある想像の世界を表現してみたくて、絵具を触ってみたのがきっかけです。
その頃お世話になった教授が色彩学や絵画材料について見聞が広く、油絵具が持つさまざまな魅力を教えてもらいました。
使い方によって絵具がみせる表情が変化したりと非常に奥が深いので、まだまだ勉強中です、笑。
《Star Treasure》岡野敦美, 2015
ー普段からホルベインのヴェルネを愛用されているとお聞きしました。この画材と出会ったきっかけを教えてください。
私はチューブ絵具を溶剤等で薄め、色を重ねながら作品を制作しています。なので色の強さを失わず、透明感のある絵具を探していました。
実際に使ってみたら、チューブから出したときの発色はもちろん、クリーミーで艶やかな質感と、色の鮮やかさがとても気に入りました。
ー具体的にどのような点が気に入りましたか?
透明色を綺麗に出せることが、1番のお気に入りポイントですね。濁りのない濃厚な色味も魅力で、混色しても軽やかで美しい色が保たれます。
色を重ねても互いに個性を失いませんし、発色の良さや輝度もそのままに、より深みのある面白い絵肌がつくれます。
ーヴェルネはシンプルな処方を売りにしていますものね。
さらに、この油絵具にはシルバーホワイトにはそれぞれ、リンシードオイルとポピーオイルで練られたものがあります。
混ぜてパステルカラーを作ったり、白のみで使用したりと、それぞれの個性を使い分けて制作できるのが魅力です。
ー特にお気に入りの色はありますか。
ヴェルネシリーズの中で好きな色を上げ始めるときりがないのですが、コバルトバイオレット、ウルトラマリンブルー、コバルトターコイズ、ビスマスイエロー、ピロールオレンジ、キナクリドンマゼンタ、を特に気に入っていて良く使います。
ー今後、挑戦してみたいことがあれば教えてください。
「モーニングコール」展示風景, 2021 アートスペース羅針盤(東京)
油絵以外のメディウムにも挑戦してみたいですね。また、インスタレーション作品とかも作ってみたいです。
あとは、絹やアクリル樹脂など。透明感のある規定材に描いてみたいですね。
ー具体的には、どんなマテリアルが気になっていますか?
最近初めて作品にエフェクト顔料を使ってみたのですが、偏光して不思議な絵肌になったので気に入っています。
オイルカラーメディウムとエフェクト顔料を混ぜると油絵具ができるので、ヴェルネと併用しても面白いかなと思ってます。
エフェクト顔料で描いた上からグレーズすると、透き通った下のレイヤーがキラキラして違った輝きが増しました。
ー最後に告知などあればお願いします。
銀座にて、PIGMENTスタッフが中心となって企画したグループ展に参加しています。
使っている画材も岩絵具やボールペンなど様々ですが、日頃から画材について良く話しているので、こうして実際に展示する機会が得られて嬉しかったです。
ぜひ、いらしてください。
展覧会情報
展覧会名「モーニングコール」
上野比佐子、岡野敦美、芹澤マルガリータ、竹本あや
会場 アートスペース羅針盤
東京都 中央区 京橋 3-5-3 京栄ビル2F
https://rashin.net/
会期 2021年2月22日(月)~3月6日(土)
11:00~19:00(最終日は17:00まで)
展覧会概要
ひんやりとした空気のなか、春の訪れを待つこの頃、カーテンから差し込む朝の光とともに鳴る、一本のモーニングコール。深く長い眠りから目を覚まし、闇夜の世界からほんのひと時でも解放されますように。そのような願いとともに開催する、平面作家4名によるグループ展です。
各々「光」や「記憶」について取り組み、絵画のもつその豊かな可能性を追究し、独自のアプローチで知覚に伴う感覚や記憶そのものをうながします。昨今オンライン化が進む日常のなかで、人間としての様々な感性・感覚が呼び覚まされるような視覚体験を提供する、上野比佐子、岡野敦美、芹澤マルガリータ、竹本あや、の作品をぜひご高覧ください。