銀灰末~ピグメントが織りなす和の色彩~

銀灰末~ピグメントが織りなす和の色彩~

みなさまは日本画用の色材というと、どのような性質を思い浮かべますか。

日本画で代表的な色材といえば、天然鉱物由来のアズライトを原料にした群青があります。

これを同じく青系の色材の合成ウルトラマリンブルーと比べてみると、質感に大きな差があります。


天然 群青


ウルトラマリン


このように同色で番号ごと粒子の大きさが振り分けられているのも特徴です。粒子が細かくなればなるほど、光を乱反射させるため色の明度が上がります。



日本画特有のマットなテクスチャーと粒子感のある画面効果は、こうした色材によって支えられています。そのため一般的なピグメントと比べて下の層を覆い隠す力が弱く、同じ絵具を何回か塗り重ねる必要があります。また、色により比重が異なるため、同じ番手を混色してもピグメントのように上手く混ざらず、絵皿やパレットで分離をしてしまうことが多々あります。また、天然鉱物由来の岩絵具は種類が限られています。


 

そのため主に植物から抽出され、種類の多い染料を胡粉に混ぜて顔料化し、絵具として利用することがありました。これは具絵具と呼ばれ、日本画では岩絵具と併用することがあります。発色は岩絵具に比べて隠蔽力が強く、光沢の少ない仕上がりになります。

このように古より美術家たちは様々な試行錯誤を重ねて、絵画の中により多くの彩(いろどり)を求めてきました。

水干絵具と呼ばれる色材も、このように胡粉を染めて板状で乾燥し、フレークにしたものです。


それ以外にも類されるような色材を用いられることがありました。水干絵具、土絵具、朱、染料のコチニールなどがこれに当たります。

こちらの「銀灰末」という商品も、そのピグメントに分類される色材です。

種類は全部で6つ。天然岩絵具に顔料を合わせて作られており、岩絵具にはないようなカラーパレットになっています。


 

商品にアンチモン化合物を含有していると記載があるため、金属系の素材をベースに作られていることがわかります。同じく金属を含む白ですと、ピグメントには鉛を使用したシルバーホワイトという白があり、こちらは今でも絵画制作に欠かすことのできない色材です。


銀灰末(壱)


銀灰末(弍)


銀灰末(参)


銀灰末(四)


銀灰末(五)


銀灰末(六)



今回は実際に気になった色を何色かお皿に出して塗ってみました。試してみた色は銀灰末(壱)と、銀灰末(参)、銀灰末(五)、銀灰末(六)です。



【使用画材】

色材:ナカガワ胡粉 銀灰末(壱)、銀灰末(参)、銀灰末(五)、銀灰末(六)

メディウム:クサカベ アラビアゴム

基底材:竹和紙 水彩画用


非常に細かい粒子で、番手としては白に近い質感を有しています。

粉状の顔料と顔料を混ぜているのに、均一で美しいグレー色をしています。画材メーカーでなければ、ここまで綺麗に混ぜることは難しいでしょう。



日本画というと岩絵具だけで描くというイメージが強いかもしれませんが、時代によって様々な色材が利用されてきました。

チューブ絵具を多用せず、着彩するたびに色材と膠を絵皿で練り合わせて描くという昔ながらのスタイルが、日本画における技法材料の幅を広げたという側面もあるかもしれません。

 

着彩用としてももちろん良いのですが、単色で塗ってドローイングの下地としても利用が可能です。


銀灰末(五)をベースにセヌリエのオイルパステルでドローイングするとこのような表情になります。


【使用画材】

色材:ナカガワ胡粉 銀灰末(参)、セヌリエ オイルパステル

メディウム:クサカベ アラビアゴム

基底材:竹和紙 水彩画用


 

少し暖色気味の絶妙なグレートーンが、無彩色を引き立てています。油性パステルのしっとりとした質感と、銀灰末の落ち着いた質感の差も魅力的です。

このように補助的に利用するのも面白いかもしれません。

 

当ラボでは、この他にも日本画でも使用できる鉱物由来以外の色材を多数取り扱っております。

ぜひ、新しい「色」を探してみてください。



Profile

大矢 享

PIGMENT TOKYO 画材エキスパート

大矢 享

1989年東京生まれ。 日本大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻博士前期課程修了。 PIGMENTにて画材エキスパートとして携わりながら、平面作品を中心にアーティスト活動中。

1989年東京生まれ。 日本大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻博士前期課程修了。 PIGMENTにて画材エキスパートとして携わりながら、平面作品を中心にアーティスト活動中。