更新日:2024年9月4日
ピンク色は、多くの場合は赤系の絵具と白系の絵具を混色することで作られますが、混色をせずとも単一の顔料でピンク色として発色する顔料もあります。 例えば日本画で用いられる天然岩絵具の紅玉末や桃簾石末は美しいピンク色をしています。
ただ、これらの色材は鉱物を砕いただけの、いわば「色のついた砂」のような状態。粒子のひとつひとつが大きく、10番より下の番手のものを用いると砂絵のような質感になってしまいます。
アラビアゴムなどの定着力の弱いメディウムは剥落をしてしまう可能性もあるため、基本的には日本画のような膠を使用した、色材のザラつきを生かした絵画表現に用いるのがおすすめです アラビアゴムで透明水彩絵具を使っていて、ピンク系の単一顔料を使用したいというときにご提案したいピグメントが、こちらのポッターズピンクです。
この記事では、この顔料の特性、歴史、使用方法や混色技術について詳しく解説します。
ポッターズピンクは18世紀に、イングランドのウェスト・ミッドランズにあるスタッフォードシャー(Staffordshire)に住む陶芸家によって発見された顔料です。色素便覧で用いられるC.I. Name(カラー・インデックス名)はPR233です。 この顔料は毒性も低く、耐光性も高いため、非常に扱いやすい顔料と言えるでしょう。ちなみに、隠ぺい力は半透明です。 特にこの顔料の水彩画に与えた影響は大きく、耐光性の高いピンク色顔料としては唯一無二の存在でした。 実際に塗ってみると、このように発色します。
【使用画材】
色材:ポッターズピンクレッドシェード、ポッターズピンク
メディウム:ガムアラビック水彩メディウム
基底材:竹和紙 水彩画用
こちらの塗り見本を見てもわかる通り、少し彩度の低いピンクをしています。この顔料の魅力はなんといってもこの粒子感にあります。
決して強い色ではないのでアクセントとして使うというよりは、他の色と混ぜて彩度を落としたり、画面に粒子感のあるマチエールを与える目的で使うと良いでしょう。 色名こそピンクと付けられていますが、ポッターズピンクレッドシェードはアースカラーを思わせる色味も有しているので、ビビットな色と混ぜて肌の色など自然な色味を作ることができます。
有機顔料と比べて混色する色への影響が強くない無機顔料ならではの特徴です。 また、アラビアゴムをメディウムとして、吸水性を有した水彩紙に着彩すると、不規則な質感が分離色のような効果を基底材に与えます。
これらをグラニュレーションカラーと呼びます。 別の種類にはなりますが、株式会社クサカベからリリースされている分離色の水彩絵具、ハルモニアでは「シフォン ピンク」というチューブ絵具においても、ポッターズピンクが使用されています。 「ハルモニア(透明水彩絵具)プラス」にもこちらの色が入っておりますので、ご興味のある方はぜひお試しください。
もちろん、この2色はアラビアゴム以外のメディウムでも使用いただけますが、この顔料の粒々した質感を生かしきれません。 そのため当ラボでは組成は異なりますが、同じピンク系でピンクマダーというピグメントも取り扱いしております。
もし、あなたのパレットにピンク色を加えたいと思っているなら、このポッターズピンクとピンクマダーはおすすめの顔料です。当ラボのオンラインショップでは世界中に向けてこちらの顔料を販売しております。ぜひお手に取ってみてください。
参考資料
Liz Steel, Potter's Pink, https://www.lizsteel.com/potters-pink/, (閲覧日:2023-04-05)
Jackson's Art Supplies, The History of Potter's Pink and Why It's a Watercolourist's Secret Weapon,https://www.jacksonsart.com/blog/2023/01/29/the-history-of-potters-pink-and-why-its-a-watercolourists-secret-weapon/, (閲覧日:2023-04-05)
Paint Library, PR233 - Potter's Pink,https://www.paintlibrary.art/pigments/red/PR233, (閲覧日:2023-04-05)