色の波紋を映す

色の波紋を映す

絵具や墨を使っている時、ふと筆洗を見るときれいな渦の模様ができていることがありませんか?私も、その色の渦を紙に写してみたいと思っていました。

 

昔の人も同じように水に浮かぶ模様を形に残したいと思いから、和紙の装飾加工の一つ「墨流し」が生まれたのかもしれません。墨流しは平安時代より料紙などに使われてきました。

英語で言う「マーブリング」の方が、耳馴染みのある方も多いのではないでしょうか。

 

墨流しは、墨や染料の穂先を水面につけ、浮かんだ色の部分に松脂を垂らす動作を繰り返し、同心円状にできた模様を和紙に写しとる技法です。

 

 

それに対しマーブリングは、墨流しを元に発展したと言われています。その後ヨーロッパにその技法が広まり、便箋や書籍の小口などに施されています。

また、その模様が大理石に似ていることから「マーブル紙」と呼ばれています。

 

マーブル紙(IL PAPIRO /フィレンツェ・イタリア)

 

 

 

今回は、PIGMENTにある画材でマーブリングを作ってみます。

使用した画材や道具をご紹介します。

 

【使用画材・道具など】

・顔料ペースト

・楮紙(生)

・アルギン酸

・食器用洗剤(少量)

・水

・筆(色数分と洗剤液用)

・皿などの容器(色数分と洗剤液用)

・平たいパッド(紙より一回り以上大きいものが作りやすい)

・筆洗

・タオル

 

【模様を作る時にあると便利なもの】

・竹串、フォークなど

・扇ぐもの(団扇など)

 

 

 

■作り方

 

①好きな色の顔料ペーストと食器用洗剤、水をご用意し、お皿や容器などに入れる

・顔料ペースト

最初に筆にたっぷり付けられるくらい入れます。

硬めの顔料ペーストの場合は、予めペインティングナイフなどで練っておくなど使いやすい硬さにしておくことをお勧めします。

 

・食器用洗剤(水:約100ml、食器用洗剤1–2滴)

水を弾く性質があるので、あまり多く入れすぎると色の模様部分まで弾いてきれいな模様が作りにくくなります。

 

私は春らしい色をイメージして顔料ペーストを選びました。仕上がりは原色よりも少し淡くなるので、最初は白や水などで薄めずに試してから調節していく方がイメージの色に近づきやすくなります。

 

 

同系色でまとめなくても好きな色を組み合わせてもいいですし、イメージに合せて色を選ぶなど、自由にお選びください。

 

顔料ペースト 一覧

 

 

 

②平たい容器に水とアルギン酸を入れる

平たいパッドや容器があると作りやすく、きれいな波紋ができます。

容器や紙のサイズにもよりますが、水は約5cm位で大丈夫です。アルギン酸を入れてよく混ぜます。

アルギン酸の量は、水が軽くとろみがつく程度入れます。目安として、水4–5:アルギン酸1くらいです。

アルギン酸があまり少ないと顔料が沈んでしまいますが、多いと模様が作りにくくなります。

顔料ペーストは色により重さが異なるので、様子を見てアルギン酸を調整してください。

 

 

 

 

③筆に絵具、洗剤溶液をつける

筆に顔料ペーストと洗剤溶液をつけます。

筆の穂に水を含ませて、その水で顔料ペーストを溶いてたっぷりとつけます。

洗剤溶液も筆にしっかりと含ませてください。

 

なお、洗剤に獣毛筆をつけると痛むので、お気をつけください。洗剤溶液用はナイロン筆や少し細い筆でも大丈夫です。

 

筆は絵具の含みが良く、先が効く方がきれいに絵具を落とせます。

 

彩色筆 一覧

 

 

 

 

④マーブリングを創る

いよいよ色で模様を創っていきます。

絵具と洗剤溶液の筆先を、交互に水面に浸けてください。

洗剤溶液は一瞬で水を弾いて円が広がりますが、絵具はあまり早く水面から離すとしっかりと色が乗らないこともあります。

また、形もかわりやすいので、一つのマーブリングを創る際は一気に進めてください。

③は予め全色用意しておくと、作業しやすいです。

 

何層も円を重ねると、より重厚感のある模様になります。

 

 

 

 

⑤模様を創る

円の形も途中で少しずつ変化しますが、さらに模様を創ります。

フォークや竹串などの先が細いもので描いたり、団扇などで風を起こして色面を動かします。

 

 

こちらは④の画像に更に円を重ね、竹串で模様を創りました。

円の模様だけでもきれいなので、その模様を写したい方は、④からそのまま⑥に進んでください。

 

 

 

⑥紙に写す

 

 

一瞬で浸透するので、色が紙に写ったら端を指や竹串、ピンセットなどで持ち上げてそっと引き揚げてください。

 

楮紙でなくてもできますが、今回は水に強く、また撥水加工のない楮紙の生20匁を使いました。薄く、弱い紙だと破れやすいので、楮紙ならば10匁以上が扱い易いかと思います。

 

 

 

 

⑦できあがり

 

 

平なところに置いて乾かして、完成です。

 

顔料ペーストならではの鮮やかな色調が、柔らかな水の波紋と融合して美しい色の渦ができました。色材を変えることで、異なる意匠を作り出すこともできます。

また、出来上がったマーブル紙に箔や描画でさらに装飾を施すことで、自分だけの料紙が創れます。

 

 

 

Instagramのライブ動画では彩墨で墨流しをいたしました。こちらもよろしければご覧ください。

【Instagram IGTV】SUMINAGASHI/墨流し https://www.instagram.com/tv/CLEF2Tlig7-/

 

 

 

水と色から生まれた波紋を、まっさらな紙に写す。

いにしえから継がれた技を、是非ご自宅でもお楽しみください。

 

 

 

 

参照資料

 

・福井県和紙工業共同組合(2021年2月14日閲覧)https://www.washi.jp/yougu/suminagashi/

・IL PAPIRO(2021年2月14日閲覧)ilpapirofirenze.eu

 

Profile

白石 奈都子

PIGMENT TOKYO 画材エキスパート

白石 奈都子

多摩美術大学染織デザイン専攻卒業。オリジナルの紙や和紙、書を主体とした制作に携わり、現在はアーティストとして活動中。

多摩美術大学染織デザイン専攻卒業。オリジナルの紙や和紙、書を主体とした制作に携わり、現在はアーティストとして活動中。