水と油の不思議な関係〜西洋絵画と油絵具〜

水と油の不思議な関係〜西洋絵画と油絵具〜

「絵具よりメディウムを重視せよ!」をキーワードに開催中の、青木芳昭先生による「ほんとはしらない えのぐの おはなし。」ですが、今回は油系のメディウムについてです。


講座冒頭は、ヤン・ファン・エイク作の《アルノルフィーニ夫妻像》からスタート。

アートファンのみなさまならご存知かもしれませんが、この作品は西洋美術の歴史において初めて油系メディウムのみで描かれた作品と言われています。


指触乾燥が遅い油絵具は時に“扱いづらいもの”とされがちですが、作家の過ごした15世紀のフランドルは湿度も高かったため絵画にカビが発生しやすかった故、ファン・エイクは油系のメディウムを使用したとのこと。


青木先生ならではな知見も交えた解説に、みなさん興味津々です。



そして次に、それら史実を踏まえた上で油絵具がどう作られてきたかを学ぶために、以下の3パターンのメディウムそれぞれの特徴について解説がなされました。

① 生の乾性油

② ブラックオイルの場合

③ ステアリン酸を加えた油メディウム




その後、参加者の方にも実際に油絵具を練っていただきました。

同じ顔料にも関わらず、色味はもちろん、粘度や質感まで違うことに驚きの表情が浮かびます。




そして最後に、油絵具を水と混ぜることでエマルション状態にもできるというデモンストレーションも行われました。

一般的な水道水では混ざらないはずの油系絵具が、硬水やpHの高い温泉水と混ぜると……見事に半油系の状態になりました。




昔のヨーロッパの画家たちは油絵具のみで作品を制作していたのではなく、このように水系〜油系のメディウムを自在に操りながらさまざまな表現を行っていた、と語る青木先生。

「油絵」や「洋画」という一見ひとくくりにされがちなものを、PIGMENT的視点で鋭く切り込んだ講座となりました。




次回の「ほんとはしらない えのぐの おはなし。」では、今回も少し触れた半油系メディウムについて焦点を当てます。ご興味のある方は是非、ご参加ください。


講座情報

[特講]ほんとはしらない えのぐの おはなし。

絵具よりメディウムを重視せよ!

第3回・半油系メディウム

2019/08/18(Sun)

13:00 - 16:00

Lecture by 青木 芳昭



※こちらのワークショップは終了しております。
最新情報は下記リンク先にてご覧いただけます。
https://pigment.tokyo/collections/workshop

Profile

大矢 享

PIGMENT TOKYO 画材エキスパート

大矢 享

1989年東京生まれ。 日本大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻博士前期課程修了。 PIGMENTにて画材エキスパートとして携わりながら、平面作品を中心にアーティスト活動中。

1989年東京生まれ。 日本大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻博士前期課程修了。 PIGMENTにて画材エキスパートとして携わりながら、平面作品を中心にアーティスト活動中。