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PIGMENT LAB TOKYO

PIGMENT岩泉館長が語るメディウムの概要とその特質 vol.2

2019-07-23

さて、PIGMENT ARTICLEでも、たびたびフォーカスを当てているメディウム。

今回は「水系メディウム」に焦点を絞り、岩泉館長に詳細をお聞きしました。テーブルに並ぶさまざまな色と形をしたメディウムたち……一体それぞれどんな特徴があるのでしょう。

 

―前回の「PIGMENT岩泉館長が語るメディウムの概要とその特質 vol.1」にて、メディウム全体について質問しましたので、今回はその中でも「水系メディウム」に焦点を当ててお話しをお聞きできたらと思います。よろしくお願いします。さて、水系メディウムの中で最も古いメディウムはどちらでしょうか。

こちらの膠が、最も古いメディウムです。というのも、ラスコーの壁画では、顔料を壁面に定着させるための糊材として動物の煮こごりなどが使用されていたという記録がございます。それを「膠」と呼ぶには少々語弊があるかもしれませんが、動物性のメディウムという大きな枠で膠を捉えるならば、膠が一番古い水系のメディウムになります。

 



―この板状のものも同じく膠なのでしょうか。

こちらは膠を液体状にさせる前のもので「板膠」と呼ばれます。


 


―これはどのようにして作られるのでしょうか。

動物の皮や肉を煮た時に出る煮こごりを乾燥させ固めるとこのような形になります。膠についての詳細は、次回の「メディウムの概要とその特質 vol.3」にてお話しいたします。

 

―端には卵が置かれていますね。

西洋では「テンペラ画」と呼ばれる絵画を描く際に、卵を使用しておりました。

卵は油と混ざる性質を持っておりまして……みなさんの馴染み深い例で言いますと「マヨネーズ」などもそれにあたります。

もちろん油は食用ではなく、絵を描くのに適したあまに油などを用いり、卵黄と混ぜて糊材とします。油絵具の登場まで、西洋では卵が主のメディウムとして使われておりました。


 

 


―その隣の白い粉も同じく水系のメディウムなのでしょうか。

これは「カゼイン」と呼ばれるもので、牛乳の中にあるカゼイン性タンパク質を抽出したものです。アンモニアで溶解させると、白濁したメディウムとなります。

ちなみに、その昔は粉状のカゼインは流通してなかったので、チーズを潰してメディウムにしておりました。そこから、カゼインは「チーズ膠」とも呼ばれます。

このカゼインはフレスコ画で主に使われていたのですが……フレスコ画というとどのようなイメージがありますか?

 



―下地が半乾きの状態で、壁に染み込ませながら描く技法というイメージがありますね。

実は、初期のフレスコ画は漆喰の上にそのままカゼインで描画をしておりました。しかし、それでは堅牢性に問題があることがわかり、染み込ませて描くフレスコ画のスタイルが誕生しました。

ただ、その技法ですと完全乾燥してしまったら加筆が出来なくなってしまうため、フレスコ画用のアフターメディウムとして引き続きカゼインは利用されておりました。

 

―この茶色い塊のようなものは何でしょうか。

これはアラビアゴムの原料で、アカシアの木から採れた樹液です。これを粉砕し、水に浸けておくと自然に溶解し、液状のアラビアゴムメディウムを作ることができます。

アラビアゴムは膠などと比べると歴史は浅く、大航海時代以降に東南アジアなどからヨーロッパに持ち込まれました。

主に透明水彩のメディウムとして使用されます。固形の水彩絵具に水で濡れた絵筆をつけると着彩できることからわかるように、再溶解性がアラビアゴムの一番の特性です。


 


―最後に、この白い液体は何でしょうか。

現代のみなさまには馴染み深い、アクリル絵具の糊材であるアクリルエマルションです。

アクリルエマルションの原料であるアクリル樹脂は本来油性であり、液体にするためには溶剤が必要です。そこで油と水を繋ぐ界面活性剤を加えることにより、水系のメディウムとなります。

アクリル絵具が乾くと耐水性になるのは、メディウム内の水分が蒸発し、油系の成分が画面に残るためです。こうした構造はさきほど紹介した卵と油を混ぜたテンペラメディウムに近く、それを科学的に再現したのがこのアクリルエマルションです。


 

―なるほど、一言に水系の絵具と言ってもさまざまな種類のものがあるのですね。

そうですね。さらに言えば、アクリルメディウムの中でも更に細分化されており、さまざまな種類のものが存在します。

たとえば、アクリルエマルションの粘度を上げるために増粘剤などの量を調整することで筆跡のエッジが効くようになるものや、体質顔料を加えることで絵具を盛り上げることができるようになるメディウムなど、多種多様です。

 

―ということはアクリルエマルションに増粘剤やその他のメディウムを加えることで、さまざまな表現が可能になるのですね。

はい。PIGMENT店頭では取り扱っているメディウムのサンプルも展示しておりますので、店舗にいらした際には是非そちらもご覧ください。



商品紹介



・牛膠溶液 直火濃縮20%

https://pigment.tokyo/ja/product/detail?id=3060


・卵テンペラメディウム

https://pigment.tokyo/ja/product/detail?id=3176


・カゼインメディウム

https://pigment.tokyo/ja/product/detail?id=3175


・アラビアゴム メディウム

https://pigment.tokyo/ja/product/detail?id=1205


・アクリルエマルション

https://pigment.tokyo/ja/product/detail?id=1218


・アクリル増粘剤

https://pigment.tokyo/ja/product/detail?id=1217

Profile

PIGMENT TOKYO館長 画材エキスパート

岩泉 慧

PIGMENT TOKYO館長 画材エキスパート 京都造形芸術大学 博士号(芸術) 京都造形芸術大学日本画コース講師 2015年に絵画表現における膠使用方法の論文で博士号を取得。 PIGMENTや京都造形芸術大学にて膠を基点とした様々な画材の研究、指導を行いながら、アーティストとしても物質存在に関するテーマをコンセプトに活動を続ける。

PIGMENT TOKYO館長 画材エキスパート 京都造形芸術大学 博士号(芸術) 京都造形芸術大学日本画コース講師 2015年に絵画表現における膠使用方法の論文で博士号を取得。 PIGMENTや京都造形芸術大学にて膠を基点とした様々な画材の研究、指導を行いながら、アーティストとしても物質存在に関するテーマをコンセプトに活動を続ける。