墨の色彩

墨の色彩

墨に五彩あり。

墨の中にも多彩の色がある、という古来から語り継がれてきた言葉があります。

思い浮かぶ色は黒のイメージがありますが、しかし同じ「黒」でもそれぞれの墨に豊かな色彩が含まれています。

この言葉の意味には、濃淡での表現、絵から受けた心象など諸説ありますが、今回は「墨の色味」に焦点を当て、その中でも青墨と赤墨をご紹介します。



まず墨はどのようにできているのか、原料と造り方についてご説明いたします。



参照:墨運堂「墨の造り方 (固形墨)」 https://boku-undo.co.jp/make/index.html (2020年12月22日閲覧)



基本材料は煤と膠。これらを練り合わせ、成型し乾燥させたものが固形墨です。

手軽に使える身近な墨だと、墨液や筆ペンなどで使ったことがある方も多いのではないでしょうか。

しかし前者と後者では大きな違いがあります。経年や硯で磨ることによる色合いの変化が見られるように、固形墨ならではの特性もあります。


煤の原料や製造方法などの違いで青みのある墨、赤みのある墨ができます。いわゆる、青墨と茶墨(赤墨)です。

種類も数多くあり、特徴の違いを固形墨の状態で比べるのは難しく、実際に使ってみないとわからないものもあります。

PIGMENT TOKYOにもたくさん種類がありますが、その一つ「大和雅墨(だいわがぼく)」で色味を比べてみましょう。



こちらは墨を磨った時の画像ですが、この時点で色の違いをお分かりいただけるでしょうか。



【青墨】大和雅墨 青燭精





【赤墨】大和雅墨 茜雲




下記の図は、「青燭精」と「茜雲」を四種の和紙に描いた比較図です。



使用画材:

【墨】大和雅墨 青燭精/大和雅墨 茜雲

【基底材】雲肌麻紙、新麻紙、楮紙15匁 晒 生、楮紙10匁 晒 生



滲みかたや色合いも、紙の種類や厚さなどによって少しずつ変化しているのが、ご覧いただけるでしょうか。墨の濃淡や滲ませ方の加減にもよりますが、淡くなるとより色味の違いが出てきます。



また、青墨では、藍や顔料を入れてより青みのある墨を作る場合もありますが、「青燭精」は墨本来の青みです。

青を添加した墨では「大和雅墨 碧潭」は本藍が入っており、藍と墨が融合した美しい色合いが持ち味です。

「画墨 蒼心」は藍と顔料が入っており、より青色が引き立っています。




こちらは、実際に描いた画像です。



淡くなると、「蒼心」の方がより青みが広がり、「青燭精」とはまた一味違う豊かな墨色が感じられます。



上記以外の、大和雅墨は下記の通りです。



■青墨


■赤墨



大和雅墨の商品詳細のページには色見本もあるので、お好みの色味を探すご参考にしてください。こちらは其々の箱にも入っているので、保管の際にも便利です。

種類によりサイズも異なりますが、初めて使う方やお試しで使ってみたい方は小さめの墨をおすすめします。



なお、固形墨を使用する際は、硯で磨ります。

一見難しそうに思われますが、必要なものは墨、硯、水の3点だけです。余分な力を加えずとも磨れるので、ご興味ある方は下記動画をご参考に是非お試しください。



【墨の磨り方】




多彩な色が広がる墨の世界。

先人から受け継いだ伝統と、長年培った技術で職人が一つ一つ丹精込めて作り上げた固形墨の魅力を、ご堪能ください。

Profile

白石 奈都子

PIGMENT TOKYO 画材エキスパート

白石 奈都子

多摩美術大学染織デザイン専攻卒業。オリジナルの紙や和紙、書を主体とした制作に携わり、現在はアーティストとして活動中。

多摩美術大学染織デザイン専攻卒業。オリジナルの紙や和紙、書を主体とした制作に携わり、現在はアーティストとして活動中。