パール系の顔料には個性的な色が数多くあります。
気品のある光沢や自然を彷彿とさせる色彩、アーティフィシャルな色など、多様な視覚効果はアーティストやデザイナーなどの表現者だけでなく、もの作りに携わる人々を魅了する顔料の一つです。
今回は、PIGMENT TOKYOでご用意しているエフェクト顔料の中で最も色幅が広く、種類の多い「イリオジン」を探ります。
イリオジンは薄い板状の天然マイカで構成された、金属酸化物の層で覆われている顔料です。30色以上あるその色種は、滑らかな色合いから輝度の強いもの、偏光するものなど、その視覚効果は多岐にわたり、バリエーションの広さを感じます。
金銀などベーシックなパール色も多様性があり親しみやす色ですが、エフェクト特有の光沢と輝きから生まれた色は、岩絵具とはまた異なる魅力があります。
数あるイリオジンの中から、今回選んだのはスカラベレッド。
粒子の状態では赤系の顔料ですが、メディウムと水を入れて混ぜると、青緑色と深紅が現れました。
【使用顔料】
・イリオジン 9507 スカラベレッド
【メディウム】
・アラビアゴムメディウム
【基底材】
・竹和紙 水墨画用紙(裏面塗布)
名が体を表すが如く、黄金虫の一種であるスカラベのように、光の当たり方で変化が見られます。また、色相環の反対がグラデーションで現れることも、個性的な美点かもしれません。
こちらは黒い紙に塗布したものです。
【使用顔料】
・イリオジン 9507 スカラベレッド
【メディウム】
・アラビアゴムメディウム
【基底材】
・黒鳥の子紙
スカラベレッドは僅かな光や傾きの違いで視覚的変化が見られたので、塗布面積を広くしてランダムなタッチで塗ってみました。絵具の厚さや光の強さ、角度によるエフェクトの違いが、ご覧いただけるでしょうか。
次は、同じ赤でもパール系の色です。
ルチルレッドパールは粒子の状態だと黄味とピンクがかったアイボリーホワイトのような色味です。メディウムと水を混ぜても大きな変化が見られません。
【使用顔料】
イリオジン 215 ルチルレッドパール
【メディウム】
・アラビアゴムメディウム
【基底材】
・竹和紙 水墨画用紙(裏面塗布)
スカラベレッドような幅広い色相の視覚効果は見られませんが、落ち着いた品のあるパール系のピンク色です。天然マイカのような柔らかみのある自然な色合いです。
今回、白地塗布サンプルでは竹和紙の水墨画用紙の裏面に塗布しました。
当商品の裏面は凹凸が少なくエフェクト顔料絵具を塗ると、塗布部分が少し隆起してエフェクトが見えやすくなるので使用しました。表面に塗ると更に隆起します。(※顔料により異なります。)
エフェクト顔料は鏡面素材や滑らかな紙肌の方が塗りやすく、より美しい光輝性を発揮しますが、基底材と顔料の特性と表現方法を探りながら、ご自身の用途に合わせてお試しください。
こちらは黒い紙に塗布した画像です。
【使用顔料】
イリオジン 215 ルチルレッドパール
【メディウム】
・アラビアゴムメディウム
【基底材】
・黒鳥の子紙
黒地の塗布では、鮮やかなピンクが現れました。こちらもスカラベレッドと同様に光線の強弱や照射角度、見方により色味が異なり、その加減により白地に塗った時のような淡いパールピンクも見られました。
同じイリオジンでも色種により光の影響の受け方が異なり、鮮やかな色から控えめな偏光色まで実に多彩です。
今度は、透明な基底材にも塗ってみます。
下の画像は、視覚効果がわかりやすいスカラベレッドをアクリル板に塗布し、金色と黒色のパネルの上に置いてみました。
【使用顔料】
イリオジン 9507 スカラベレッド(塗り1回)
【メディウム】
アクリルエマルション
【基底材】
アクリル板(透明)
【アクリル板 下のパネル】
黒鳥の子紙 / 箔(金色)
どちらも左手より光を当てています。下のパネルの金色がある側は、下から箔の反射光も受けている状態です。絵具の厚みにより光の透過も異なるためか、僅かながら部位による色味の違いがご覧いただけるでしょうか。
こちらはあくまでも一例ですが、エフェクト顔料と他の色材、基底材などの各特性を生かして組み合わせることもできます。また、透過光の差を利用した表現や、メイン色材としての使用、ポイント使いや体質顔料と併せて下地に使うなど、是非色々とお試しください。
基底材によりメディウムを使い分けたので、今回は2種使用しました。
ご紹介した以外のイリオジンは、下記リンクよりご参照ください。
また、過去のエフェクト特集記事もございますので、ご興味ある方はご高覧ください。
まだ秘める可能性のある光輝性顔料。光と色の探求から成る色彩の世界は、新しい表現の道に繋がるかもしれません。