光×色 -偏光する顔料-

光×色 -偏光する顔料-

PIGMENT TOKYOにはたくさんのエフェクト顔料があります。

色との出会いは楽しみでもありますが、種類が多くて迷う!という何とも贅沢な悩みも発生します。

私はいつも店内にあるエフェクト顔料のサンプル帳と、WEBサイトの商品ページを活用していますが、アーティストでもあるPIGMENTのスタッフに最近のおすすめや好きな顔料を聞くこともあります。

自分では気づかなかった効果や新たな技法に出会うことは、これも色探しの楽しみのひとつです。

今回は、スタッフとのエフェクト談義から生まれた「エフェクト顔料そのものに黒で着色した場合は偏光する」という事象にフォーカスします。


これまでの特集記事と、WEBサイトのエフェクト顔料の商品ページの見方については、こちらをご覧ください。

【FEATURES】

◾️光 × 色 -クロマシャイン-

◾️白 × 光 × 黒 -エフェクト顔料-

◾️光彩を添えるカラーエフェクト -イリオジン-



エフェクト顔料には、基材に違う物質で被覆処理をした、偏光系と呼ばれるものがあります。

Merck社のエフェクト顔料には基材となる物質が5種類あり、種類によって顔料の特徴も変わります。基材自体に色はありませんが、コーティング剤の種類や厚さ等により表れる色も異なります。


こちらは基材の種類と特徴、使用しているエフェクト顔料の一覧です。併せてご参照ください


◾️雲母(マイカ)

顔料:イリオジン(天然又は合成マイカ)、ピリズマ(天然)

・粒子径も大小ある。

・最もポピュラーな基材で、顔料の種類も多い。


◾️シリカ

顔料:カラーストリーム

・見る角度により反射する光、干渉色が変化する。


◾️アルミナ(アルミニウムの酸化物)

顔料:シラリック

・高彩度、高輝度。

・キラキラしている。

・自動車の塗色に多い。


◾️ガラス

顔料:ミラバル

・高透明性、高粒子感。

・透明性が高く、粒子径が大きい(〜200μ)。

・視覚的にも光輝感が強い。


◾️アルミニウム

顔料:メオキサル

・メタリック調

・アルミニウムなので他に比べて不透明

・隠蔽力が高い。



今回は黒と白の紙に塗って色の比較だけでなく、黒い顔料を予め混色して塗布するとどのように変化するのか試してみました。

使用したエフェクト顔料はこちらです。


画像左:ミラバル マジックブルー

画像右:シラリック T60-25 コスミックターコイズ




粒子の状態だと視覚的にはどちらも白系ですが、マジックブルーは少し赤みのある青、コスミックターコイズは緑の干渉色が淡く表れています。

サンプルの塗り見本の印象や、色名から連想される雰囲気に引っ張られて、私もついつい有彩色をイメージして棚を探していると実は白色の顔料だった、ということがエフェクト顔料ではよくあります。




最初は白と黒の紙に塗ります。



光の当て方や塗布の厚さにより見え方が変わりますが、こちらの画像は色の偏光の様子が見えるように角度をつけて撮影しました。顔料の色は、商品ページのサンプル画像と併せてご参照ください。

白い紙に塗布した色面は、青から赤みのある紫、白系へと淡く変化します。

一方、黒い紙に塗布した方は、絵具の厚みの違いと偏光した色の変化が白地よりわかりやすく、ミラバルの特徴でもある大きい粒子から放つ強い光輝感も顕著に表れます。





シラリックも同じく、光の当たり方や塗布の厚みで偏光も変わります。

マジックブルーの粒子径がΦ20-200µmに対し、コスミックターコイズがΦ5-30μmなので、比べるとこちらの方が落ち着きのある輝きです。

また、粒子が細かいので分散性もよく、色面の内部から輝いているような高彩度の色の美しさを感じます。




次に、この絵具に黒い顔料ペーストを混色します。




【使用画材】

色材:ミラバル マジックブルー/顔料ペースト カーボンブラック

メディウム:アラビアゴムメディウム

基底材:竹和紙 水彩画用


マジックブルーにはカーボンブラックを少し多めに入れたので、絵皿では真っ黒に見え、干渉の変化が見えるか心配しました。顔料ペーストのブラックなどの強い色は、少しずつ入れて調整してください。粒子の存在感も際立ち、重厚感のある色面です。




【使用画材】

色材:シラリック T60-25 コスミックターコイズ/顔料ペースト カーボンブラック

メディウム:アラビアゴムメディウム

基底材:竹和紙 水彩画用


コスミックターコイズは、カーボンブラックを少なめにして混色しました。色面が厚い箇所は黒の存在を感じない程度ですが、薄づきのところは黒味がわかります。

少量のカーボンブラックでもしっかりと色の変化が見えました。




顔料ペーストを入れる量を変えて混色しましたが、どちらも黒い紙に塗った時と同じように偏光しました。

このやり方では絵具を作る際によく混ぜていることもあり、筆跡のむらが比較的出にくいようです。

エフェクト顔料によっては、水系の絵具を作る際に、顔料がきれいに分散しにくい場合もあります。その際は、分散剤を使うことで混ぜやすくなります。



ご紹介した以外のやり方では、ダークトーンのジェッソや黒以外の顔料との混色など、ぜひ色々とお試しください。



また、Instagramのリールで、塗布している様子を動画でご覧いただけます。リールには他にも気軽に見て楽しめる様々な動画をアップしています。


◾️ミラバル マジック ブルー

https://www.instagram.com/reel/CPRy9tziOuY/


◾️シラリック T60-25 コスミックターコイズ

https://www.instagram.com/reel/CPK80KgisXq/




ミラバルやシラリックなどの多数のエフェクト顔料は、ライフサイエンス、エレクトロニクス、ヘルスケア関係のドイツ企業、創業350年の「Merck(メルク)」が製造しております。

先日、Merckの日本法人でパール顔料(サーフェスソリューションズ)部門を担う、メルクパフォーマンスマテリアルズ合同会社とインスタライブでコラボ配信を行いました。

ライブでは、エフェクト顔料の基本情報からなかなか聞けないマニアックな疑問まで、Merckの方にお答えいただきました。干渉と偏光の仕組みもわかりやすく説明されているので、エフェクトに興味がある方は必見です。

私も、さらにエフェクト顔料に親近感が湧き、ますます興味を持ちました。


◾️PIGMENT TOKYO Instagram

【LIVE Collaboration】MERCK and PIGMENT TOKYO




なぜ、エフェクトに惹かれるのか。

その答えのひとつとして、光を纏い変化する揺らぎの儚さを感じるからなのかもしれません。

美しい色はたくさんありますが、基材から発する輝きと、光による色の変幻、その融合が、揺らぎの色に繋がっているのではないでしょうか。

自分の気づかなかった琴線に触れるようなまだ出会っていない光の色を、今後も探っていきたいと思います。




◾️Merck

https://www.merckgroup.com/jp-ja


◾️メルクパフォーマンスマテリアルズ合同会社

https://www.merckgroup.com/jp-ja/company/performance-materials.html


◾️Instagram

Merck Japan

https://www.instagram.com/merckjapan/


Merck Performance Materials

https://www.instagram.com/merck_surface

Profile

白石 奈都子

PIGMENT TOKYO 画材エキスパート

白石 奈都子

多摩美術大学染織デザイン専攻卒業。オリジナルの紙や和紙、書を主体とした制作に携わり、現在はアーティストとして活動中。

多摩美術大学染織デザイン専攻卒業。オリジナルの紙や和紙、書を主体とした制作に携わり、現在はアーティストとして活動中。