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TranTixxii®開発秘話インタビュー

2020-04-15

PIGMENT ECサイトでは、日本製鉄株式会社が開発した意匠性チタン、TranTixxii®(トランティクシー)を用いた絵画用基底材「カラーチタンパネル」を販売中です。

https://pigment.tokyo/ja/


こちらは表面がツルツルしたSD3。凹凸がありザラザラしたND20もございます


前回の記事でもお伝えしたとおり、当日は記者会見と併せて、TranTixxii®を利用した平面作品制作のデモンストレーションも披露されました。


トップバッターは当ラボの画材エキスパートでもある、ペインターの斉藤桂。マスキングを利用し、描画面とチタン層を明確に区切ることで、金属の光沢を活かしました。自作絵具によるPIGMENTならではのテクニックも魅せます。





続いては書家の根本充康さん。Google Mapの座標軸を主題にコンセプチュアルな作品を制作。深く、しっとりとしたTranTixxii®の色彩は、ミニマルな表現を高める物質としての美を放っていました。





最後に、書道家の真澪さん。当ラボでも取り扱いのある水性アルキド樹脂絵具「AQYLA」とアクリル絵具を併用して「感」という文字を描きました。巧みな筆さばきによる、色同士の混じり合いや”かすれ”も、はじくことなく表現できます。






記者発表終了後、同社のチタン技術部チタン商品技術室の主幹であり、黎明期から一貫して中核として活躍する、意匠チタンの第一人者である徳野清則様に、TranTixxii®開発秘話をお聞きしました。


―TranTixxii®は本当に魅力的な商品ですね。

TranTixxiiブランドにはいつくかの核となる技術群がありますが、年月をかけて個々の技術を積み重ねた末に、チタンに“美しさ”を追求するという世界でも類例のないブランドを展開する現在に至っています。

お客様の声を拾うヒアリング・叱咤激励はもちろんのこと、非常に多くの試行錯誤を重ね、一つ一つ事象を解明し、技術的な限界をクリアしつつ、何とか製品化を成功させてきました。

「チタンという工業製品の枠の中で、これまでに存在しない新しいものをつくってやろう」私はエンジニアとして情熱を注いできたコンセプトです。但し、これらの商品は多くの実験やテストが必要とします。特に一度きりの成功ではなく、再現性のある安定した製品を製造できるようになるまでには、メカニズムの解明も含めもの凄く時間がかかります。

TranTixxiiブランドの基本テクスチャーの一つであるダル仕上(ND20)の量産技術の確立をスタートとして、チタン特有の変色現象を世界で初めて克服した耐変色技術、チタンの表面に本物の金さながらの輝きを持たせるイオンプレーティング技術に至るまで、一つ一つの技術に強い思い入れがあります。

特に、イオンプレーティング技術は、開発から商品になるまで10年くらいかかりました。笑。この道40年第一線で開発を続けておりますので、この意匠チタンの分野でのパイオニアとしての自負もあります。


軽快な口調でインタビューにお答えくださった徳野様



―そもそも、なぜチタンに興味を持たれたのですか。

大学時代、ばったりチタンと出会ったことがきっかけです。70年代当時は、チタンの意匠性を加味した用途は眼鏡フレームくらいで、建築用にも使用が検討され始めたばかりで、今のようにゴルフクラブや腕時計、マグカップ等の多種多様な民生品に使われていませんでした。ただ、研究室で話を聞いているうちに、次第に興味を持つようになり、のめり込んでしまいました。直感的にチタンというものが肌にあっていたんだと思います。


多種多様な質感をもった製品サンプル。全て同じ素材から作られている



―そこからチタンの可能性を見出していた。

当時はチタンが量産開始されてから約30年弱のチタン黎明期で、他の金属に関しては実践的な側面も含め先行研究が多数ある一方で、チタンに関してはそうした情報が多くありませんでした。逆に、そういう状況だからこそ、ゼロから開拓できる余地があり、開拓者としての自分の可能性が試せると思ったんです。世の中に全くない新しいことができるんじゃないかと。私自身も学生当時から「チタンは海水に強く半永久的に錆びない」という話は聞いていましたが、正直な話、あの時代から、自分が特に携わった意匠チタンを含めて、ここまでチタンが多種多様な製品に採用されるまで発展するとは思いませんでした、笑。


試行錯誤の元で作られてきた実験サンプル



―これらをどういった思いで開発されていたのですか。

大前提として「半永久的に錆びない」というチタンの特性に対して強い信頼感がありました。すぐに朽ちる、消費される金属であれば、新しい価値を積み重ねようと、ここまでのめり込むことはなかったかもしれません。一般的な金属に比べて、価値が維持される点で貴金属のような側面が強いのかもしれません。意匠チタンの“美しさ”という価値にしても、一過性のものでなく、半永久的なものとして次の世代にも残して行ける。少しずつ積み上げてきた努力が、こうして蓄積ができるものだったからこそ、ここまで情熱を燃やすことができたと考えています。ここに並べている意匠チタンの実験サンプルも理論上、数百年・千年単位で時を超える事が出来るものばかりですし。笑。チタンは、本当に努力し甲斐のある金属と考えています。


入社したての頃は「どうやって加工性や耐食性の優れた新しいチタンを作るか?」や「どうやったら効率よく生産できるか?」などの課題を上司から与えられておりましたが、私は常に「お客様にどういう新しいもの・新しい価値を提供できるか?」という点へフォーカスを当てていました。 黎明期にあるチタンという金属を通して、お客様のニーズに応え、新しい価値を生み出していきたいという想いが強かったです。

日本製鉄は、昔から懐が大きく、タイプの異なる多様なメンバーを抱え、それぞれの社員が持つ個性を生かせる会社なので、自分の持てる技術をどう生かし、仲間と工夫して、ビジネスへ展開するのか?を考えられる土壌があることが非常に魅力的ですね。

そういう土壌の中で、先輩方や同僚に支えられながら、自らの想いに忠実に、若いうちから比較的闊達に仕事をさせてもらってきました。


―開発にあたって苦労された点はございますか。

当時は「素材として安定したものをつくるために何をしたらいいか?」を考えるのが本当に大変でした。会社が基礎研究や、その応用方法について、長期にわたる試行錯誤と実験結果、研究成果の蓄積を続けさせてくれたからこそ、今があると思っています。

当社が開発した意匠チタンについては、こういった蓄積の末に完成した技術群が、結果としてとある建築家の外装に大規模に採用されたことがブレイクスルーとなりました。

「これまでに存在しない新しいものを作りたい」と冒頭に私の開発にあたっての想いを申し上げましたが、具体的な技術開発にあたっては、「10年前は当たり前じゃなかったことを当たり前にする」を常に私の矜持として、自らを叱咤激励し続けてきました。




―逆に、どういったときに喜びを感じますか。

それはもちろん素晴らしい製品ができたときですよ。やったぞ!と達成感を感じます。この興奮の瞬間のために、今この瞬間まで技術開発を続けているに等しいですね。笑

ただこれらの技術開発は普段から、粘り強い試行錯誤や実験結果に対する分析・考察、研究成果の蓄積、これを私はトレーニングと呼んでいますが、これをしていないと、新しい現実に直面しても応用が利かず成果に結びつかないんです。しかし、このトレーニングの過程は、常に人生を仕事へ捧げる覚悟で臨まないといけないくらい厳しいものです。私たち技術開発側で想定しているものと、お客様のニーズとの間でギャップが生まれることは、頻繁にあるのですが、応用が利かないと、最初から“できない”と限界を決めて逃げるばかりになり平行線となってしまいます。

この時、あのムダとも思えたトレーニングによって培われた観察眼・応用力により、上手くギャップをすり合わせる事が可能になるのだと思います。新しいものを生み出すには、欠かせない事だと私は考えています。


―これからの展望などもお話しいただけますか。

実は、まだまだ、今、頭のなかで温めているアイデアが沢山あるんです。世の中のニーズやタイミングを捉えて、こうした”本当に作りたいもの”が作れるチャンスを常に伺っています、笑。

最先端の技術を用いた全く新しい価値を生み出すチタンでありつつ、再現性もあり量産を通じて広く価値を届けられる。そんな、世の中を「わっ」と驚かせる技術・ビジネスの展開に繋げることが夢であり野望ですね。まだまだでやりたい事が尽きませんが、若いメンバーにも頑張って貰い、私と違った視点から新たなものを生み出して欲しいです。

意匠チタンも日々の試行錯誤の中で、新しい意匠がうみだされ続けています。こうしてPIGMENT TOKYOさんとご縁を頂き、新しい美的表現を支え、新しい価値を生み出すチャンスが出来た事は、本当に励みになります。TranTixxii®(トランティクシー)とのコラボレーションの第一弾は私が開発に携わってきた中で基礎的なメニューの展開となりましたが、是非、日々生まれる実験段階の最先端のメニューについても、これまでになかった全く新しい形で、世の中を彩る面白い展開ができるのではないかと期待しております。

自分で言ってしまって申し訳ありませんが、ここにある実験サンプルも間違いなく世界初でこの世に存在していなかったものですから、PIGMENT TOKYOさんは世界最先端にいらっしゃいます。絶好のチャンスをものにしない手はないですよ。笑


今回、3人のアーティストの皆様によるパフォーマンスを拝見させていただき、美術館で作品を前にした時と同じく、激しく感動させられました。こんな才能を持った方々を、スタッフ並びにパートナーとして擁するPIGMENT TOKYOさんとコラボさせていただける事に、深く感謝いたします。

特にチタンの歴史的な背景を踏まえて表現をされていた、根本様の作品の持つ力には、チタンに人生をささげてきた自分としては、ひれ伏すばかりでした。

今から20年近く前、とあることがきっかけで自分自身が一介のエンジニアに過ぎない事に気づかされ、自己の美意識を開発の基準にしてはならないと学びました。やはり、本当に人の心を激しく揺さぶるのは、その道で生きる覚悟と努力によって培った力や技なのだと気づいたのです。


まだまだ発展する余地の大きいチタン。この魅力や可能性・醍醐味を後輩たち伝え、私の後継者になれるような技術者を輩出できるような場づくりをしたいと思っています。私自身、こうして挑戦的にチタンの研究開発を続けてこられたのは、諸先輩から受け継いだ自由闊達な環境や膨大な技術蓄積の基礎があってのことですから。




企業情報


日本製鉄株式会社 本社

東京都千代田区丸の内二丁目6番1号(丸の内パークビルディング)

TEL:03-6867-4111 / FAX:03-6867-5607

https://www.nipponsteel.com/index.html


意匠チタンTranTixxii®(トランティクシー)ブランドホームページ

https://www.nipponsteel.com/product/trantixxii/


Color Titanium Panel SD3 
11,000JPY
Color Titanium Panel ND20 
11,000JPY


Profile

Art Materials Expert of PIGMENT TOKYO

AKIRA OYA

Born in 1989 in Tokyo Master of Fine Art and Design at Nihon University College of Art While working at PIGMENT TOKYO as an Art Materials Expert, he also continues his artist career composing visual art works.

Born in 1989 in Tokyo Master of Fine Art and Design at Nihon University College of Art While working at PIGMENT TOKYO as an Art Materials Expert, he also continues his artist career composing visual art works.