油絵具ができるまで〜クサカベ工場見学〜

油絵具ができるまで〜クサカベ工場見学〜

みなさまは画材店に並んでいる油絵具が、どのようにしてつくられているかをご存知でしょうか。製造からチューブ詰まで機械で作られているとお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、意外にも人の手で作られている部分も多いのです。

 

埼玉県に本社を置く株式会社クサカベさんにお邪魔し、技術開発部課長の岩崎氏に絵具の製造現場を見学させて頂いた後、オリジナル油絵具を手作りさせて頂きました。

本記事ではその様子をご紹介します。

 

① 顔料とメディウムを練り合わせる

全ての絵具は顔料と糊材がなくては作ることができません。

今回は油絵具を作りますので、もちろん油系のメディウムと混ぜ合わせます。

ですがここでひとつ問題が。油絵具に触れたことがある方ご存知かもしれませんが、通常のリンシードオイルと顔料を混ぜ合わせるだけでは粘度が足りず、硬さの調整がしづらい絵具となってしまいます。

そこで登場するのがステアリン酸です。このステアリン酸は適度な粘度がある上に、顔料の分散を助ける性質を持っているため、油絵具を作る上で欠かせません。また、これは動物性〜植物性脂肪で最も多く含まれる飽和脂肪酸でもあり、私たちの体内にも存在しています。

このステアリン酸とリンシードオイルを混ぜたメディウムと顔料を練り合わせることで、適度な硬さの油絵具を作ることができるのです。

ステンレスバットに顔料とステアリン酸入りリンシードオイルを入れ、ナイフで粉がなくなるまで練り合わせます。

 

 

 

 

② ローラーで絵具を練る

ナイフで練っただけでは顔料とメディウムが均一にならないため、更に練る作業を行います。かつてチューブ絵具が市場に出回る前までは、油絵具は大理石の板とマーラーにより何時間もかけて練ってつくられていました。しかし、大量生産するにあたり全ての工程を手作業で行うことは難しいため、3本ローラーを使用して油絵具を練ります。

この3本ローラーですが、それぞれ交互の向きにローラーが回転しており、その隙間を微妙に調整しながら、均一に練り上げられるように調整します。

ローラーにかける前の絵具とかけたあとの絵具を見比べると一目瞭然。発色はもちろん、色の艶や気泡が減っているのがわかります。今回使用したウルトラマリンの場合、このローラーで練る作業を4回繰り返します。

 

 

 

 

③ チューブに詰める

工場でチューブ絵具を作る場合は、充填機を使用して機械で絵具をつめるのですが、今回は1本分の絵具のため手で絵具をつめます。

まずトレーシングペーパーをチューブに巻き、折り込みます。

そして、中に絵具を詰めて、パレットナイフで押し付けるように折り込んで完成です。

 

 

 

 

 

 

 

④ 清掃

最後に3本ローラーの清掃を行います。

まず、絵具の体質顔料としても使用される炭酸カルシウムを利用し、ローラーの油を大まかに取り除きます。

 

 

 

その後、上部にある器具を外し、石油で清掃します。このパーツはロールから絵具がはみ出ないようにする大切なパーツだそうです。

 

 

 

そしていよいよ、ローラーの清掃に入ります。なんとこのローラーの清掃は止めて行わずに動かしながら清掃するんだとか。

手がローラーに巻き込まれないよう、回転に対して逆方向の向きに手を添えて慎重かつ丁寧にクリーニングしていきます。

 

 

いかがでしたでしょうか。

普段、私たちが何気なく手にしている油絵具も、様々なプロセスを経て作られていることがわかりますね。

 

株式会社クサカベさんは、ホームページ上にて、工場見学や絵具作りなどのイベント情報を随時掲載しております。

イベントへの参加お申し込みは、下記のURLをご参照ください。

http://www.kusakabe-enogu.co.jp/school/school_event.html

 

企業情報

株式会社クサカベ

本社/本社工場

埼玉県朝霞市膝折町3-3-8 〒351-0014

tel. 048-465-6661(代表) fax.048-465-7756

Profile

大矢 享

PIGMENT TOKYO 画材エキスパート

大矢 享

1989年東京生まれ。 日本大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻博士前期課程修了。 PIGMENTにて画材エキスパートとして携わりながら、平面作品を中心にアーティスト活動中。

1989年東京生まれ。 日本大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻博士前期課程修了。 PIGMENTにて画材エキスパートとして携わりながら、平面作品を中心にアーティスト活動中。