DIC川村記念美術館「カラーフィールド 色の海を泳ぐ」展 ×PIGMENT TOKYO  レポート

DIC川村記念美術館「カラーフィールド 色の海を泳ぐ」展 ×PIGMENT TOKYO  レポート

DIC株式会社が関連企業とともに収集した多彩なコレクションを有するDIC川村記念美術館。

現在、同館で開催中の企画展「カラーフィールド 色の海を泳ぐ」にて、PIGMENT TOKYOは色材展示と夏休みワークショップで協力いたしました。

今回は、そのレポートをいたします。


カラーフィールドとは、1950年代後半から60年代にかけてアメリカを中心に発展した抽象絵画の潮流です。今回の展示は、関連する作家9名に焦点をあて、その代表作の数々が集結した日本初の展覧会です。

彼らは、絵具をキャンバスに染み込ませるステイニング技法やスプレーガンの噴霧で色を蒸着させる画法などを考案し、大きなキャンバス一面に色彩を用いて場(=フィールド)を生み出しました。

 

 企画展「カラーフィールド 色の海を泳ぐ」会場風景

撮影:渡邉修

写真提供:DIC川村記念美術館

 

 

企画展「カラーフィールド 色の海を泳ぐ」会場風景

撮影:渡邉修

写真提供:DIC川村記念美術館

 

その色彩の素となる顔料は、太古より粉砕した鉱物や土を精製した天然顔料です。

現代では、天然由来の化学合成された顔料など1000種以上の選択肢があると言われています。

 

 

 

PIGMENT TOKYOでは、素材と色材、その歴史や使用法など、多角的な観点から見識を深め、展覧会をより楽しんでいただくために「400色の虹―顔料の世界」を展示しております。

展示されているのは、土絵具や岩絵具などの伝統的な天然顔料や、最新技術で製造されたエフェクト顔料など、当ラボの持つ4500色の顔料からセレクトした400色。併せて、その素材となる鉱物などが一堂に会して見られる、貴重な展示です。

 

 

 

展示会場は、庭園を望む美術館付属のギャラリー。

こちらは入場無料ですので、どなたでもご覧いただけます。

 

 

 

またタイアップイベントとして、特別ワークショップ「じぶんの色、みんなの色」も開催。

絵具の歴史を勉強し、顔料と糊剤をまぜる水彩絵具作りを体験します。完成したら各自でタイル状のカードを着色し、壁面に貼って大きなカラーチャート(色見本)のようなモザイク作品を作ります。

天王洲アイルのPIGMENT TOKYOで定期的に開催している「水彩絵具づくり」のワークショップとはひと味異なり、展覧会のコンセプトに合わせた内容です。

 

こちらは当ラボのワークショップでも講師を務める、画材エキスパートの斉藤が担当しております。

絵具とその歴史について、押さえるべきポイントを資料とともに解説する導入から、作り方のデモンストレーションまでを、まずは座学で進めます。

 

 

 

理解を深めたら、いよいよ絵具づくりの開始です。

大理石版や錬り棒を使い、水干顔料と糊剤のアラビアゴムでオリジナルの水彩絵具を2色作ります。

 

 

 

水干顔料の組み合わせのみによる鮮やかな色や、ホワイトを混ぜた淡い色、雲母をたくさん加えた輝くパールカラーなど、ひとつとして同じ色がありません。

好きな色、欲しかった色、それぞれがイメージした異なる色相の絵具が白い板に広がっていきます。

 

 

 

試し塗りを重ねながら、じぶんの色を探します。水で溶いて白い紙に移った色を確認しながら、理想の色に近づけます。

 

 

今回のワークショップでは滲み方に差のある2種類の竹和紙をご用意し、色味や広がりの違いも体験していただきました。展覧会の出品作に見られるステイニング技法の原理を日本に置き換えて実感するのが目的です。

 

 

 

作った絵具は、専用ケースに入れてお持ち帰り。

自分だけの絵具で描いた絵は、特別な作品になるのではないでしょうか。

 

 

 

次に、壁面へ貼るタイル状のカードに作った絵具を塗ります。

各々が、濃淡と塗り方に変化を与えて「じぶんの色」を定着させていきます。

 

 



カラーチャートとなるカードも、試し塗り同様に水彩画用と水墨画用の竹和紙を使います。濡れ色から乾き色への変化もおもしろく、見逃せないところです。

配置を検討できたら順番に貼っていきます。

 

 

 

真っ白だったキャンバスに、みんなの色が添えられました。

回を重ねるごとに参加者の「じぶんの色」が増え、それぞれが響き合う「みんなの色」に育つ様子をTwitterでアップしております。

講座の最終日には、どのような作品が出来上がるのでしょうか。

全員分が貼られてもなお、マスの数は少し余るよう調整してありますので、残された白がどの位置で「みんなの(軌跡を示唆する)色」に見えるのかも、一緒にお楽しみください。

 

 

第一回目(7月16日)終了時点

 

第六回目/最終回(8月20日)終了時点

 

「みんなの色」は、第1ギャラリーにて9月4日まで展示しております。また、こちらからワークショップ風景や、「みんなの色」の過程をご覧いただけます。

DIC川村記念美術館Twitter https://twitter.com/kawamura_dic

 

PIGMENT TOKYOでは、このような美術館や展覧会とのコラボレーションによる企画を通し、絵画材料や技法の普及活動も行っております。

今後も、分野を超えた表現の可能性を広げる活動をしていきたいと思います。

 

(取材日2022年7月16日)

 

企画展「カラーフィールド 色の海を泳ぐ」会場風景

撮影:渡邉修

写真提供:DIC川村記念美術館

 

 

展覧会情報

こちらの展示は終了しております。

 

 

【開催概要】

展覧会名 「カラーフィールド 色の海を泳ぐ」

期間 2022年3月19(土)~9月24日(日)

会場 DIC川村記念美術館(千葉県佐倉市坂戸631)

主催 DIC株式会社

ホームページ https://kawamura-museum.dic.co.jp/art/exhibition-past/2022/color-fields/

 

PIGMENT TOKYO 協力展示 「400色の虹―顔料の世界」

期間 2022年7月5日(火)-9月4日(日)

時間 11:00-17:00

※7月16日から8月20日の毎週土曜日はワークショップ実施のため13:00開場

場所 庭園内 第1ギャラリー(入場無料)

WEB https://kawamura-museum.dic.co.jp/topics/2022/06-400color/

 

※こちらのワークショップは終了しております。
最新情報は下記リンク先にてご覧いただけます。
https://pigment.tokyo/collections/workshop

夏休みワークショップ 「じぶんの色、みんなの色」

期間 2022年7月16日(土)、7月23日(土)、7月30日(土)

   8月6日(土)、8月13日(土)、8月20日(土) 

時間 10:30-12:00(受付開始10:00)

会場 庭園内 第1ギャラリー

参加費 サポーターズ会員 4,000円/一般 4,500円(当日現金払い、美術館入館チケット付き)

対象 小学校3年生以上

定員 各回8名

WEB https://kawamura-museum.dic.co.jp/topics/2022/06-minnanoiro/

 

 

Profile

白石 奈都子

PIGMENT TOKYO 画材エキスパート

白石 奈都子

多摩美術大学染織デザイン専攻卒業。オリジナルの紙や和紙、書を主体とした制作に携わり、現在はアーティストとして活動中。

多摩美術大学染織デザイン専攻卒業。オリジナルの紙や和紙、書を主体とした制作に携わり、現在はアーティストとして活動中。